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2009/01/11

産業の担い手についての考え方の変更

○補足的ではあるが、制度の維持可能性という観点から重要なのは、生活支援サービスを提供する事業主体の在り方である。米国のチャンドラーが「組織は戦略に従う」という経営学・経済学上の極めて重要な命題を提出しているが、生活支援サービスを提供する事業体にふさわしい組織形態とは何かということをあらかじめ検討していくことが望ましい。

○サービス提供に事務所が少なくとも1つ必要かもしれないとは言え、生活支援サービスでは、必ずしも巨額の固定設備を本質的に必要とせず、かつ、サービス提供の現場における多様性が求められる。そのような性質の「ビジネス」には、現在の株式会社(営利法人)という仕組みが適当ではないと考えられる。

○そもそも株式会社とは、19世紀末期にその有効性が認められて普及した比較的新しい仕組みであり、巨額の固定設備投資を賄うため、多数者から資金を集めるべく、配当収入の分配を受ける権利を、一括化・規格化して分かりやすくした仕組みであるというのが、歴史的な理解である。

○とすると、巨額の設備投資を必要としない生活支援サービスについては、株式会社によるサービス提供というのは、チャンドラーのいう「戦略」と「組織」の適合性が確保されないのではないかという懸念を生じさせる。その一例が、介護におけるコムスンの撤退なのではないだろうか。

○つまり、大規模設備を必要としないので、株式で資金を調達したところで、その資金は、フローの支出に充当されることになる。少なくとも、固定資本形成には充当されない。とすると、外部資金の拠出者は何を持って経営のオペレーションをコントロールするのであろうか。サービス産業で、大きな資本を調達する事業の典型的な姿が、スーパー等のように他店舗展開か、フランチャイズ形態であることから分かるように、(能動的)投資家はパッケージ化されたビジネスモデルの善し悪しとその実施状況をモニタリングすることになろう。

○一方、生活支援サービスは、サービス需要者の足らざるを補うビジネスであるが故に、多様性を本質に求められる産業であり、「パッケージ化」がふさわしくないのである。とすると、外部者による事業コントロールが困難となるので、資金拠出者とオペレーションの一致が求められることとになる。つまり、生活支援サービスは、本質的に(所有と経営の分離を指向する)大規模株式事業体にはなじまないビジネス属性を有しているということであろう。

○とすれば、今後は、株式会社ではない小規模事業体が、円滑にビジネスを行うことができるような法体系を作る必要がある。法人組織が本当に適当かどうかの検証も必要である。つまり、民法の組合契約による事業運営の税法上や公共支出法上の取り扱い、合名会社等への有限責任制の導入によるリスクカットと資金流入確保のための金融取引法制(債権総論、担保物権法制)、事業主体と労働者との関係が完全対立型ではない場合の労働法制(特に、労働協約締結や団体交渉等を巡る労働組合法制)、雇用保険や被用者保険等の社会保障法制を検証する必要がある。あるいは、場合によっては、生活支援サービスの「振興」のために、これらの横断的な法律分野についての特例法を整備することが適当かもしれない。

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