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2009/01/11

自足型国家への転換

○目下(2008年第4四半期)の国際的金融情勢から明らかなように、当面国際的な資本移動は停滞することになろう。また、世界の(浪費的)需要を支えていたアメリカ経済が数年間は需要停滞期に入り、また、複数期にわたる民主党政権となる場合、経済の面で内向き指向となり「国産回帰」となることが予想される。いわば、ニューディール期のアメリカのようになるものと予想される。

○そもそも日本の経済規模に対する対外経済の比率は低いことは周知である。例えば、GNPに対する輸出の比率は1割程度であり、純輸出(本来の国民所得への寄与)としては、ほぼ0となりつつある。

○確かに、輸出産業による稼得によって、企業収益が下支えされたことは事実であるが、外需は基本的に振幅が大きく、日本のコントロールの及ばない需要項目である。近時のマクロ経済学において、経済の振幅(景気変動)があること自体に起因する経済厚生損失が、行動経済学の発展により明らかとなりつつあるところ、コントロールの難しい景気変動要因の国内の経済活動に与える影響力を下げることが、経済厚生上望ましい。

○勿論、日本経済が自給自足のアウタルキー経済になれる訳もないので、輸出や輸入を阻害する必要は全くない。特に、エネルギー資源や食糧については輸入が必要であるし、これらを輸入すること自体は、ベネチア共和国(食糧を100%輸入したが、そのような経済体制を500年近く継続できた)の例にあるように害悪ではない。大事なことは、エネルギーや食糧といった生存に必要となる資源の物質代謝の範囲を明確にし、その範囲での輸出入を指向し、輸出入や外資導入などを促進するなどという政策アジェンダの設定は止めるということである。

○そして、一部の輸出産業の収益に「逃避」「依存」して、国内経済、地方経済、社会の中位より下位で転落の危機にある者の現実から目をそらしても、何も改善しない。外よりも、内への「投資」に注力すべき。かかる意味では、上記の「逃避」「依存」を助長した、「選択と集中」=金銭的投資価値が高いと思われる事業への集中という、所詮一企業レベルの適応戦略をそのまま国家レベルの経済政策に導入することは戒めるべき。それは「清算主義」「しばき主義」の失敗を繰り返すことに繋がる。

○まず、日本という国自体を包摂型の社会へと転換することが必要である。後期高齢者、ニート、貧困母子家庭の児童などの社会的弱者を置き去りにすることによって、社会や国家が受けるメリットなどは存在せず、彼らを社会コストを分担する市民(単なるオムではないシトワイヤン)へと包み込み参加させることとなる社会でなければ、その社会は持続できず、立憲主義的な意味での国家の存立基盤(闘争からの回避)やその正当性(社会契約)が維持できないであろう。

○以上、まとめれば、輸出志向の効率よく資本収益を稼ぐビジネスを指向するのではなく、物質代謝を維持できるだけの輸出入確保を基本として、包摂型社会に転換できるような生活支援型サービスに徹底的に公的資源を投入して、これらのサービスが経済的に発展可能となるような政策へと転換し、変動の大きく、コントロールの及ばない海外経済の影響が、日本の国内の生活(弱)者の経済条件に影響を与えないような、安全ゾーンを作ることにエネルギーを注ぐべきである。全ての国民に「無限のマラソン」を強要するような経済成長志向は、近代の産物であり、所詮、何世紀も持続させることはできないことを悟るべきである。

○補足すると、足下円高傾向が維持されていることは、この自足経済への移行をサポートすることになろう。円高により急激に交易条件が「改善」するので、日本が輸出する必要のある経済成果の量が大きく減少することになる。つまり、日本経済に占める輸入財のウィエイトが下がることになるからである。

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