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2009/01/15

日本銀行も市場に「まみれる」べきでは

 本日1月15日の報道によれば、「日銀は、14日、企業が資金調達のために発行する社債を買い取る方向で検討に入った。」そうである。
 この措置の実施は、今月の金融政策決定会合で定めるそうであるが、その具体的内容は、

「日銀は現在、金融機関から売り戻し条件付きで社債を買い取り、市場に資金を供給している。検討しているのは、企業が発行した社債を保有する金融機関から完全に買い切る手法。売り戻し条件がないため、金融機関は安心して企業から社債を購入でき、資金繰り緩和効果が見込める。」(同上記事)

というものだ。


 こういった枠組みは、2008年12月19日の金融政策決定会合で定められた「金融調節手段に係る追加措置について」の中の

(2)CP買入れを含めた企業金融面での追加措置の導入・検討

 今後、年度末に向けて企業金融が一段と厳しさを増すおそれがあることを踏まえ、時限的に、CPの買入れ(買切り方式)を実施することとする。それとともに、企業金融に係るその他の金融商品についても対応を検討することとし、それらの検討結果をできるだけ速やかに金融政策決定会合に報告するよう、議長から執行部に対し指示した。これらの措置は、結果的に個別企業の信用リスクを負担することになるものであり、中央銀行としては異例の対応となる。この点を踏まえ、議長からは、中央銀行としてどの範囲でどの程度の期間行うことが必要かつ適当か、また、中央銀行の財務の健全性と通貨に対する信認を確保するために、政府との関係も含めどのような対応が必要か、といった点からの検討を求めた。

の延長線上で出てくる発想であることは想像に難くない。


 しかし、この後に及んで、なぜまだ「社債」の「金融機関」からの買い入れという段階にとどまるのか、理解しがたい部分がある。問題点は2つ。

・買い入れ対象資産を社債に限定していること
 そもそも、創成期の日本銀行はもっと、政府と協調して、より積極的な金融政策を実施していたのである。
 例えば、高村直助『会社の誕生』 によれば、

 もともと、日本銀行条例第一二条は、不動産・株券を抵当とする貸金を禁じていた。しかし実際には銀行の実状を無視することはできず、手形割引の担保として八四年下期に横浜正金銀行株、八五年五月に日本鉄道会社・第十五銀行株を認め、その後増加しつつあった(『日本銀行百年史』第一巻)。そして九〇年(1890年-引用者註)恐慌時に、これを制度化せざるを得なくなったのである。(P152)

 このように、既に日本銀行は、株式担保融資を経験済みであり、中央銀行の資産として管理する経験はできているのである。にもかかわらず、未だ取得資産について、徐々に進捗するという姿勢は、不思議である。

 しかし、さらに問題なのは、次の点であろう。

・買い入れ先が金融機関に限定されていること
 日本銀行とFRBの政策スタンスについての「至言」として、次がある。


「FRBのはマクロ金融政策、日本銀行のは金融システム安定化政策である」


 また、日本銀行とFRBの政策スタンスの差異についてのサンフランシスコ連銀総裁の発言が注目されているが、その中では次のような評価がされている。

 日銀の場合、超過準備の拡大は、明示的な数値目標の意図的な適用によりもたらされた。日銀の操作の背景となった理論は、保有する短期国債を現金に代替することにより、貸し出しのインセンティブが生まれるのでは、ということだった。この考えの問題点は、金利ゼロ近傍では、短期国債と現金はほぼ完全な代替物になることにある――どちらも、基本的にゼロないしゼロに近い金利の無危険資産であり、従って、片方をもう片方に交換することは、銀行の貸し出し意欲にほとんど影響を与えるものではなかった。実際、2000年代初めの量的緩和における日本の経験は、単に銀行の超過準備を拡大することは――いかに巨額にせよ――銀行の貸し出し、ないし経済全般にほとんど影響しないということを示している。

~ジャネット・イエレン「FRBは日銀とは違う」 『himaginaryの日記』より~

 金融機関を経由しての市場調整では、実体経済に与える影響が非常に限定的になることは、過去の経験から明らかだということであろう。とすれば、金融機関の保有する社債の購入ではなくて、市場から直接購入してしまうのが得策ではないのか。

 折しも、「ほふり」の一般社債統計では、2008年第4四半期の社債増加高は、07年の同時期と比較して大幅に低下している。

 ここで日本銀行も、どうせ社債の買い切りにのぞむのであれば、社債の市場からの直接購入に乗り出して、「金融システム安定化政策」機関から脱却して、「マクロ金融政策」機関へと脱皮するべきではないか。

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