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2009/02/27

岩田正美「社会的排除」

 岩田正美「社会的排除」から、注目される箇所2カ所ほど。


P17

 「参入」というのは日本では耳慣れない言葉だが、「排除」と対になった言葉であり、排除された人々の社会的なコミュニケーションやネットワークの回復に社会の側が責任をもつ、という意味だという。


P23

 したがって、関係の欠如は、同時に声やパワーの欠落でもあるともいわれるわけである。だが、たとえば通常、職場集団などでは権限が上部に集中し、下位にいくほど小さくなるので、正規就業者であっても下位の人ほどパワーは欠落している。そこで、どこまでのパワーの欠落を排除というのかは難しい。この点に関しては、たとえば職場でのパワーの欠落に対抗する労働組合などへの参加によって、自分の意思の表示を行うなど、対抗するパワーを獲得することが可能であれば、必ずしも参加の欠如とはいえないだろう。したがって、そうした声やパワーの発揮が可能であるような社会関係をほとんどもてない状況が、排除として問題にされることになる。たとえば、日本で最近問題となっている日雇い派遣で就業するような人々は、契約した日は確かに就業者として「関係者」のゲートを通り抜けることが可能であるが、彼らがくぐり抜けられるゲートはきわめて限定されていようし、また何よりも既存の労働組合には彼らは包含されにくい。


日雇い派遣だけではなく、派遣切りにあっている派遣労働者や雇い止めにあった期間労働者というのは、個別の違いはあるにしても平均としては「参入」や「参加」の機会を制限されているのだろう。彼女/彼らの「参入」「参加」を進めるためには、既存の労働組合から排除されている非正規労働者のエンパワーのための組織化が必要だ。
 もちろん、非正規労働者のための派遣企業を横断するような労働組合でなければ効果的な活動はできないだろうから、現行の労働組合制度の下ではだめ。
 重要なことは、「職場でのパワーの欠落に対抗」できるように、その労働組合に、派遣先企業との団体交渉権の付与、逆に言えば、派遣先企業への団体交渉の義務づけを行う必要があるだろう。ある程度は判例でこの権利義務は認められているが,きちんと一般化・普遍化することが大事だろう。
 ただし、この措置により、派遣労働と直接雇用のコスト差が縮むので、派遣労働から直接雇用へのシフト(代替効果)と,全体としての雇用減少(所得効果)が生じるかもしれないが、この所得効果を中和するためには、マクロ経済政策を発動するべき。労働法制をいじることでは、本質的な解消はできない。
 いずれにせよ、派遣労働法制や解雇権濫用法理(労働契約法)をいじることで、労働条件に直接介入する前に、組合法制を整備して、派遣労働者らの労使交渉の環境・条件を労働側にエンパワーすることが先だろう。そして、その結果どういう交渉結果が出てくるのかを見極めることが、平時のルールの在り方を見極める上で有効だと思う。


P144

 いずれにしても、雇用から排除されるだけでなく、再就職からの決定的な排除があるために、その長期失業は社会保険の規定を超えやすく、しかしまだ生活保護受給には早いとされる、四五歳から六四歳までの(とくに家族の支えのない単身者の)生活を誰がどう支えるか、それへの福祉国家の回答が回避されてきたことが、九〇年以降の路上ホームレスの基本問題であったといえよう。この点はホームレスだけでなく、中高年男性に集中する孤独死や自殺の背景にある共通問題だったともいえる。


 中高年男性に対する「再就職からの決定的な排除」は、日本では本当に深刻な問題だと思う。というのも、この排除を放置すれば,ホームレス化してしまうほど「排除」されている人だけではなくて、生活はしていけるが税や社会保険料の負担者ではなくて、社会保障で生きていくだけの存在となる退職後の男性が増加することに繋がるから。労働人口減少国家では,これは深刻だ。
 この「排除」の原因として、中高年男性のロールモデルの貧困さがあると思う。つまり、中高年男性像を想像すると、職人、商店主、自営専門職、企業管理職のようなマッチョなロールモデルしかないということ。

 エスピン-アンデルセンの「アンデルセン、福祉を語る」では、「男性のライフスタイルの女性化」の重要性が指摘されている。
 中高年男性のロールモデルを多様化させ、マッチョではない多様なロールモデルを、中高年男性(いやそれだけではなくて,男性全員)の自己認識としてだけではなく、社会全体で共有できるようにならなければならない。そして,中高年男性も様々な職業にチャレンジする上での心理的障害を壊さないと、中高年男性の「再就職からの排除」が解消されることはないだろう。

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