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2009/09/15

行政組織の編成にも大臣を中心とした柔軟性が必要なのでは?

 2009年9月15日現在の新政権の組閣に向けた動きの中で、いわゆる各省の長たる大臣以外に、雇用担当相、年金担当相などの特命事項(新政権の目玉事項)を担当する国務大臣の任命の可否が唱えられている。
 しかし、これらの大臣ポストを現行の内閣府設置法第9条の「特命担当大臣」として任命しても、殆どその実効はあり得ないであろう。これは、決して、年金担当相や雇用担当相の担う事務が厚生労働省設置法上厚生労働大臣(厚生労働省)の事務として規定されているので、特命担当大臣の事務にできないという点を指摘しているのではない。下記の条文にあるとおり、特定担当大臣の職務は、内閣府設置法第4条に掲げる事務の中に任意の一部であり、要すれば、当該条項の解釈の問題である。当該条文の第2項には、「内閣の重要政策に関して閣議において決定された基本的な方針に基づいて、当該重要政策に関し行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に関する事務」が掲げられており、年金問題や雇用問題を十分読み込める職務範囲となっている。

(特命担当大臣)

第九条 内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関して行政各部の施策の統一を図るために特に必要がある場合 においては、内閣府に、内閣総理大臣を助け、命を受けて第四条第一項及び第二項に規定する事務並びにこれに関連する同条第三項に規定する事務(これらの事務のうち大臣委員会等の所掌に属するものを除く。)を掌理する職(以下「特命担当大臣」という。)を置くことができる。

2  特命担当大臣は、国務大臣をもって充てる。


 問題は、そこにはない。問題の本質は、特命担当大臣の場合、それは内閣府に置かれる大臣であり、内閣府以外の行政組織に対し、直接の指揮命令権が存在しないということである。要すれば、内閣府の職員に対してしか、命令できないということだ。
 これでは、年金政策や雇用政策について実行力を発揮しろと言われたところでどうしようもないことは、一見明らかであろう。例えば、少子化担当相なる特命担当大臣がいたが結局何もできはしなかった。それは、内閣府という組織では実際の行政サービスを供給することができないからである。これ以外にも、内閣府には男女共同参画だの、自殺対策だのと冠のついた部署があるが、具体の行政サービスの提供・展開は、他の省が執り行うものであり、実際には、各省の行う事務を一覧表にすることだけが仕事のようなのだ。
よって、年金担当相なり、雇用担当相を実効あるものとして設置する(勿論、厚生労働大臣の下の副大臣として特定の実務を取り仕切らせる方が合理的という点は置いておいて・・・)のであれば、この大臣に年金行政や雇用行政を担っている部署に対する直接的指揮命令権を与えることが必要となる。
 そのために、厚生労働省の年金局や社会保険庁、職業安定局を内閣府その他の組織に移管するなどと言い出せばまた大変だ。それぞれの設置法を改正する必要が出てくることになり時間の無題である。さらに、そのような改正が出来たとしても、その改正事項に限られるものであり、当該特命事項が政権にとっての最優先事項でなくなると、結局また行政リソースの無駄を生むことになる。
 そこで、臨時的に特定の行政組織について指揮命令できるパス・経路をこの際作ってしまうとうのが賢いと思われる。
 具体的には、次のような規定を内閣府設置法の特命担当大臣の次に一条を追記するのである。

(特命担当大臣による特定の行政事務の分担)

第9条の2 内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関して(行政各部の施策の統一を図るために-不要かもしれない)特に必要がある場合において、内閣府設置法第4条の規定にかかわらず、特命担当大臣に対し、特定の行政事務の分担管理を掌理することを命じることができる。

2 前項の場合において、国家行政組織法第10条の規定にかかわらず、特命担当大臣は、内閣総理大臣が定める特定の行政事務を管轄する庁(国家行政組織法第2条第2項の「庁」をいう。」)又は局(同法第3条第1項の「局」をいう。)の事務を統括し、職員の服務について、これを統督する。

3 前2項の「特定の行政事務」及び「特定の行政事務を管轄する庁又は局」を定める時は、閣議の議を経、それを告示しなければならない。

4 特命担当大臣は、第2項の規定により統括することとなる庁又は局の属する省の主任の大臣と密接協力して、第1項の規定により分担管理することとなる行政事務を遂行するものとする。


  こうすれば、行政組織の新設や移管という、コストと時間ばかりを要する作業を省略し、時々の政権にとって重点となる政策について、機動的な組織的バックアップを確保することが可能となるものと思われる。
 このような措置を講じれば、例えば、雇用や年金問題が一段落した後に、地球温暖化対策担当相を設置し、その大臣の下に環境省の地球環境局と経済産業省の資源エネルギー庁を傘下に置くというようなことも可能となる。
 
 なお、上記の追加条文の3項については、もう少し検討が必要である。
 というのも、行政組織法制における重要な論点として、行政組織の職分をどこまで法律で決めるか、つまり、国会による組織統制をどうのように図るかという問題がある。
 現在は、各省設置法及び内閣府設置法により行政各部の担う事務分担が法定されており、その業務を行政各部の長たる「主任の大臣(内閣法第3条)」の権限が法律によって法定されるという形で、組織統制が図られている。
 このように、行政組織の編成について、どこまで法律で定めるのかというのは、憲法や行政法上の論点なのである。通説的見解とされる「民主的統治構造説」では、「憲法第41条の定める国会中心主義を根拠に、行政組織の編成権は国会にあり、組織規範についても原則として法律主義が妥当する」「なお、民主的統治構造説によって、行政組織の編成をすべて法律事項とするのではなく、細部について行政の自己決定に委ねることは認められている。」(桜井・橋本『行政法(第2版)』p41)
よって、上記のような条文を新設し、特命担当大臣に臨時的な行政事務分担を執り行うことは、例外事項として許容されると思われる。が一方で、第3項のような閣議・告示だけではなくて、国会による組織統制として、もう一段国会の関与を認める方策が求められるかもしれない。
 例えば、国家行政組織法上法律で明記されていない政令事項の行政組織の状況について国会報告が義務づけられているところ、特命担当大臣の下に特定の行政組織が配置されることについて、事前や事後の報告を義務づけるということも必要になるかもしれない。しかし、機動性重視という観点からは、事前承認のような形にはしない方が良いと思われる。こういった組織編成も含めての議院内閣制なのだから。


追記:

 上記のような改正により、特命担当大臣が、特定の特命事項(行政事務)を遂行し、そのための行政各部を指揮監督するということの組織法的な基盤、つまり行政機関の内部関係を規律する規範は、整備されるだろう。
 しかし、作用法的な基盤、つまり行政機関外部との関係を複雑にしてしまうという問題が生じる。
 というのも、行政機関外部との関係というのは、結局、外部に対する誰のどういう行政行為であれば、その行為の効果=責任が国家に帰属すると外部から主張できるかという点が問題なのであるが、上記のような改正だけだと、特定の行政事務を分担する大臣、行政作用法上の「行政機関」が複数生じることになるからである。
 この問題の解消のためには、特命担当大臣に、特定の行政事務の遂行が命じられた場合には、当該行政事務は、当該行政事務を割り振られた省の「主任の大臣」から、委任されたものとすることが適当であろう。

 つまり、上記の新設条文の4項は、

4 第1項の規定により分担管理することとなる行政事務を遂行に必要となる権限は、同項の内閣総理大臣の命により当該事務を遂行することとなる特命担当大臣に、第2項の規定により統括することとなる庁又は局の属する省の主任の大臣から委任されたものとみなす。

という規定に変更される必要がある。

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