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2009/10/11

財政支出におけるターゲット戦術の破綻

<野田副財務相>厚労省などの予算増、例外は認めず 10月8日  毎日新聞

 野田佳彦副財務相は8日の会見で、各省庁に15日の提出を求めている来年度予算の要求について、「(09年度)当初予算より減額で要求してほしいとお願いしている」と述べ、要求総額は09年度当初予算の一般歳出51.7兆円を下回る水準に抑えたい意向を示した。民主党が政権公約に盛り込んだ「子ども手当」などで約4兆円の予算増が見込まれる厚生労働省についても、例外なく増額を認めない考えを表明した。

経費・補助金一律2割カット、厚労相が指示 10月8日 読売新聞

 長妻厚生労働相は、来年度予算編成に関し、省予算を大幅節減する方針を固め、9項目の具体策を省内に指示した。
 同省所管最大の公共事業である水道施設整備事業を原則2割削減するほか、国家公務員OBが5代以上にわたって理事長などの要職にある法人への補助金を原則禁止するなど、「聖域を設けず」、事細かな節減措置を示した。
 厚労相の指示は6日付の文書で通知され、「既存予算の徹底的な見直し」を掲げた。個別の経費削減対象として、〈1〉上水道整備などの公共事業〈2〉事業委託・物品調達〈3〉業務用に使うコンピューターシステムなどの開発費、利用費やリース料〈4〉国家公務員OBが在籍する公益法人、認可法人などへの補助金――について、一律に2割削減するとした。
 公益法人などへの厳しい対応の背景には、「天下りのための法人」との批判が根強いとの判断がある。また、「基本的姿勢」として、給付費や義務的経費についても、事務執行体制の効率化で節減努力を行うよう求めている。


 母子加算の復活や子ども手当の創設など移転支出の拡充を図る一方で、全体の予算増額を抑えるために一律に官僚が直接支出する「経費」の一律2割カットを図るという構造が生まれてきている。一律カット部分というのは、行政機構が細々と行ってきた補助事業や直接の購買行為を削減するということだ。
 
 行政官僚が「良かれ」と思って行っている細々とした事業がことごとく失敗し、それどころか、無意味な「官僚」間接雇用おのための経費へと堕落している以上、当然のことだ。
 天下り問題と切り離してみても、いわゆる産業政策や科学技術政策のように、役所又はその「委任」を受けた者が、助成対象や支出対象を自由に選定することができるターゲット(絞り込み)型の施策はことごとく成果を出していないという現実からすれば、この政策手法(政策戦術)の元になされる財政支出の大幅な転換は早晩進められるべきであり、いや遅すぎたということもできよう。

 結局、役所は利益集団からの「あれもこれも」という政治的圧力に抗すべくもなく、あれもこれもと細々とした予算措置をターゲット戦術に基づいて、ひねり出してきた。その最も象徴的で愚劣なものが「国立マンガ喫茶」であるメディア芸術センター構想であったのだろう。たかが100億をそれも箱物に支出したところで、何も変わりはしない。
 一方、移転支出は、本来、ルールが確定すれば、裁量的な対象選定は許されない性格のものであり、役所の自由度は低い(それが、立憲主義にかなうのであるが)。また、社会保険庁の例に見られるように、移転支出を丁寧かつ正確に行うことは、結構プレッシャーとコストを要するものである。だから、移転支出は、役所に好まれないのかもしれない。

 しかし、これからは、役所(特に、国家行政機構)は、移転支出のような所得再分配と、社会制度の立て直しのためのルール整備に意を注ぐべきなのであり、金銭で対象の行動を変化させるべき裁量的なターゲット戦術からは、全面的な撤退を模索すべきではなかろうか。

 見直され再整備されるべきルールは、「規制改革」という文脈、コンテキストに限らず様々存在する、雇用ルール、組織ルール、契約ルール等々を、人が個人として自律的に生きることができる社会、「疎外ばかりを生み出す組織」に縛られずに経済活動に安心して従事できる社会、堅い組織の結合体ではなくて社会になるために、「身分保障」とヒエラルキーという堅固な組織に拘束された官僚組織がなさなければならない制度再構築の量は多い。

 いずれにせよ、官僚の裁量的経費支出の排除という思想が見えてくる共に、それが現実を動かし始めているということ。勿論、予算という法形式によるこれまでの行政統制、役所統制がいかに形骸化していたかを象徴している訳で、その問題点が全面的に解消されるには時間と胆力を要するであろうし、一過性の査定プロセスで理想状態が生じる訳もないし、時間共に劣化も生じる。それゆえ、ターゲット戦術型=役所裁量的事業を洗い出して一律にカットするという姿勢での予算要求自体の精査というプロセスは常に必要。
 とりあえず、この新政権の元では、最初ということでもあるから、削減率を大臣が競う位で当面は調度良いのではなかろうか。

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