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2009/10/15

閣議決定手続ルールの設定

ここの続き。


2.閣議決定手続ルールの設定
 そもそも、議院内閣制を採用する日本国憲法下において、官僚組織主導の行政運営との対比で喧伝される「政治主導」の行政運営における「内閣」の果たすべき機能とは何なのだろうか。
憲法上「内閣」とは、一般行政事務その他の事務を行う(第73条)機関であり、行政組織全般を指し示す概念である一方、第66条では、「その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する」と、選挙で選任された議員・政治家(及びその個別の信認を得た者)によって構成される組織(会議体)を表す概念ともなっている。
 いわば、「内閣」とは憲法レベルでは、「政治職による構成体」と一般行政組織とが渾然一体となって表現されている。よって、「政治主導」あるいは「官僚組織の悪弊の除去」のために、「内閣」の強化を唱ってみてもあまり意味がない。それよりも、憲法第66条第1項に示される「内閣」概念、つまり選挙で選任された議員・政治家(及びその個別の信認を得た者)によって構成される組織(会議体)の機能強化策を明示的に検討する必要がある。

 ここで注目すべきは、「内閣」と「閣議」の差異である。内閣法上「内閣がその職務を行うのは、閣議によるものとする」(第4条第1項)とされており、実は閣議こそが、政治的意思決定手続き(プロセス)としての内閣の実体であると解すべきである。とすると、閣議の再構成、実効性確保こそが、内閣機能における「官僚制の悪弊の除去」のための特効薬ということになる。

内閣=閣議という会議体の機能強化を図る上では、他の会議体として構成される行政組織の有り様が参考になるが、例えば、国家公安委員会も公正取引委員会も、多数決と可否同数の場合の委員長の議決権を法定している。
 しかるに、内閣法には、合議制機関としての議決方法を定める規定はなく、慣行として、全会一致方式がとられているとされている。これでは、特定の課題を総理が閣議決定したいと志向しても、役所間の対立があった場合、反対の立場の役所の意を受けた大臣が反対すると閣議決定できないということになる。そうなると閣議が機能不全に至るので、事前に議案内容を調整するということになる。
 これでは総理の指導力など発揮できるはずもない。勿論、総理大臣には憲法上国務大臣の罷免権があるのだから指導力は発揮できるはずだという議論もあるが、議案について一々、大臣を罷免していたら、仕事にならない(大臣再任の政治的コストの高さを見るべき)。

 この問題を助長しているのが、内閣法第3条第1項における各大臣の分担管理原則である。この分担管理原則のため、意識しようがしまいが、各大臣は、固定化した官僚組織の「代表者」となっている。戦前の明治憲法における各大臣単独輔弼性を「引きずっている」行政組織法制の考え方であるが、この各大臣の在り方と閣議の全会一致慣行とが、結局官僚組織による事前調整を不可避とすることに繋がり、これが更に総理個人の指導力を法的に弱めている。

よって、閣議を行政府における最高意思決定の場と改めて定立し直して、閣議においては、その決定は閣議メンバーの多数決によるものとし、かつ、同数の場合の総理大臣の議決権を内閣法上定めるものとする。さらに、閣議内の多数派工作により、総理大臣の志向が否決されることを避けるため、総理大臣に拒否権を与えるものとすることも必要ではないか。

 なお、多数決制(総理拒否権制)が、憲法66条3項、内閣法1条2項の連帯責任制と抵触するのではないかと議論があり得る(この連帯責任制が全会一致慣行の根拠とされている)。ただ、この責任は、国会が個別の大臣の罷免ではなく、内閣構成体全体の罷免、つまり内閣不信任を行うということの現れであり、会議体としての内閣=閣議の意思決定方法と直接のリンクがある訳ではない以上、十分、多数決ルールと連帯責任は両立するであろう。この場合には、国務大臣が賛否に拘わらず主任の事務等を閣議方針に従い遂行する義務を負わせると同時に、閣議における賛否につき総理以外に対して無答責とする(よって、賛否について非公表)などの措置を講じることが必要であろう。


 さらに続く

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