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2009/10/23

不動産担保に依存しない信用創造の確保のためには

 ここの続き。

 不動産担保による融資、特に事業用資金の貸出を不動産担保に依存して行われる金融機関の貸出行動は、個別の金融機関の経営行動としての正当性も低くなっているが、不動産バブルに繋がりやすいという観点から、マクロの政策的視点からも正当化されなくなっていると言い得よう。
 では、不動産担保に依存せずに事業用資金に対する金融機関(特に預金取扱金融機関)の資金供給を増加させる制度的基盤をどこに求めれば良いのであろうか?
 バブル期以前から金融機関の貸出姿勢については、「事業性評価スキルのアップをと」、さんざん言われてきているが、事業評価のみによって行う「プロジェクト志向・指向」の融資が非常にうまく回っており、社会の隅々にまで十分な信用を供給する程に浸透していると分析する者はあるまい。ベンチャー融資などについても、散々喧伝された割には、結局ベンチャーとは確率的にレアなものでしかなく、マクロの意味ので資金循環の原動力、いわば吸引ポンプとしては機能してないし、機能させるようにることは定義により不可能。
 安定した資金循環を担うべき預金取扱金融機関としては、「安定した」個人の不動産取得に依存したビジネス・モデルを、日本のみならずアメリカでさえとり続けたというのが実際のところ。

 では、アメリカはともかく、この日本で、不動産担保に依存しない事業用資金の循環を十分に回らせるためには、どうすれば良いのであろうか。ベンチャーの育成などというものは、到底マクロの政策手法としては期待できるものではない。余りに低確率でしか、この回路による信用創造回路は有効に機能しないので、政策効果を見通すことができないし、あまりに投資効率(財政投入効率)が悪い。

 事業としての採算性が見通せるための条件の一つは、当該事業に対する需要が確実であり、かつ、相当の規模あると思われることである。一般的には、「それが分かれば困らない」ということなのだが、社会福祉分野(含む、義務・基盤教育)については、潜在的に需要が確実かつ相当規模あることは明らか。
 その潜在需要が所得配分の不全により抑制されているだけであり、倫理的・政治的に公的ファイナンスを使って潜在的に存在する需要を顕在化させることが可能である。
 つまり、この分野の事業報酬及び労働報酬を確保すれば、関係事業所は、大儲けはできないであろうが、債務返済の計算をすることが可能となる。そのためには、目下の介護報酬や医療の点数制度のように、1~3年で報酬単価をころころ変えるのではなく、少なくともマクロの財政投入の推移について、10年位のコミットを行うべきであろう。勿論、これは選挙によって変えられてしまう面があるのは確かなのだが。こうすれば、当該分野における事業に対す融資は無担保でも回るはず。

 一見この仕組みは、事業融資に対して公的保証をつけているだけとも評価することもできるかもしれないが、金融(機関)対策としての公的保証制度では、結局、対象業種の特定のない「薄蒔き」になるので、投入する資源量比での効果が効率的とならない。

 それ故、社会的需要を確実に満たすという面での政策効果が高く、かつ、信用創造の充実を図る上でも、(バウチャー的性格を持たせた:この点について別で論じている)社会保障/福祉事業の充実、すなわち財政投入によって、当該分野に対する信用創造を拡大することが得策であろう。
 そのような社会事業への資金循環に適合的な金融機関、例えばNPOファイナンス、ソーシャル・レンディング、マイクロ・ファイナンスなどのルーリングを発想することが重要なんだろう。

 昨今は、平成の徳政令である「亀井モラトリアム」もあり、また多重債務者対策としての貸金業法の改正により、NPOで執り行われてきた生活密着型貸金ビジネスが苦境に立たされていたりする。
 資本というか、信用貨幣は、国家権力の力によって、その量をコントロールすることが可能。目下の日本は、明治期から戦後の高度成長期とは異なり(国際収支の天井の消滅)、国家権力外の決済・交換手段を、資本財導入のために必要としていないのだから、資本/信用貨幣の増加コントロールの余力は大きい。
 つまるところ、適切な金融=財政政策(このワーディングの意味はこちら参照)によって、資本/信用貨幣を増加させるとともに、市民経済各層に社会厚生を高めるに目詰まりなく配分する機構・機序を、既存の金融機関のイメージに囚われずに、構想する力が求められている。

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