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2009/11/19

中核的財政支出方法論~ターゲット戦術の破綻(信用失墜)~

ここからのつづき。


 ここまでの戦略論、つまり政策の目標設定論に続いて、どのような財政支出を構想するべきかという戦術論が必要となる。
 ここで振り替えなければならないのは、一時期の世論調査における「公的支出の無駄排除、官僚嫌悪」と「社会福祉の再建」とが同居している点である。この点をとらえて、一方の論者は「市場主義」(小さな政府)が指示されていると解し、他方は「福祉社会」(大きな政府)が指示されていると主張し、さらに他の論者は、日本人世論の矛盾をなげくといった議論が展開されていた。
 しかし、これは何ら矛盾なく解釈することができ、いわば「ターゲット戦術の破綻」と解釈することができる。

 何らかの経済政策、特に「経済成長志向の政策」と称されるものについては、「選択と集中」の美名の元に、政策リソースえをい特定に経済主体や経済対象(地域)に「ターゲット」を絞って支出されることが多かった。問題は、その「ターゲット」選定の非効率性である。この選定行為は、政治的に決められるか、官僚機構によって決められてきたが、その決定の成果がこととごとく失敗しているということである。典型的には、技術開発政策の支援先決定と公共事業の箇所付けである。これらの選定行為は、その経済成果を強調しようとすればするほど、矛盾を露呈することになる。つまり、経済的にペイするのであれば、そのメリットを享受する人々がコスト負担するはずであって、政策的支援、つまり税金投入は必要ないということである。とすれば、費用便益分析の理論的には、公的政策の対象になるということは経済的失敗が確約されているとも言い得る。
 また、所詮政治プロセス、官僚機構プロセスには「素人」集団であし、選別課程を担える能力をもっていないのである。また、「専門家」を活用するにしても、相当厳しい責任追及制度を含めたエージェント問題を解消する手法を確立しない限り、素人集団は専門家によるレント活動に利用されるだけに過ぎない。
 「公的支出の無駄排除、官僚嫌悪」とは、このターゲットを政治プロセスや官僚プロセスを通じて選定することの不効率、不公正を国民が実感しているということの表象であると考えることができる。国民は公的経済による社会福祉の充実を指示しているのであろうが、それが行政的に「勝手に」選別された経済主体に「給付」されることを忌避しているのであって、いわば「ターゲット戦術の破綻」とでもいうことが出来るであろう。
 
 では、どのような政策実施プロセスを考えればよいのか。
 まずは、どうやっても完全な透明性確保の難しい「供給サイド」の事業主体への「補助」は支持されない。これでは、同じ「過ち」の繰り返すとなるからである。   
 やはり、需要者=消費者=市民側の購買力を「エンパワー」するバウチャー型の直接給付を中核的な財政支出の戦術論とすべきである。この直接給付の対象は制度設計によって広くも狭くもできるが、生活保護給付にみられるような不透明な支給基準設定や支給対象認定を排除するために、その目標設定と実施体制に関し、公務員に対する責任追及の仕組みをしっかり作ることが重要である。
 また、足下で問題となる景気対策上の失業者訓練を時限的に予算化するにしても、雇用調整助成金を浪費する雇用企業側や資格スキルの訓練をする教育機関といった価値・サービスの供給側への助成ではなくて、雇用される個人や訓練を受ける個人をエンパワーするために需要側への支援を基本とする制度設計をおこなうべきである。

 このように需要側をエンパワーすることによって、市場による評価という選択メカニズムが機能することになる。これは、政治的、官僚機構による「セレクション」に飽いた国民感情にもフィットすることになるし、官僚機構等の素人性打破にもつながる(その点では、エコポイント制度は、環境効率性の高い商品に対する市場選考メカニズムを発露させる契機を内包しており、さらなる制度の精緻化の研究余地のある仕組みであろう)。
 政府は、この需要側エンパワーによる市場選考機能の「回復」のための措置、つまり古典的な「市場の失敗」是正策に自らを縮減させるべきであって、需要側の選考能力をエンパワーするような、情報流通の確保、多様なサービスの展開の認識力強化(支援対象メニューのローリング・スパンの短縮)などに努めるべきなのだ。


まだ、つづく。

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