« 2009年2月22日 - 2009年2月28日 | トップページ | 2009年3月15日 - 2009年3月21日 »

2009年3月1日 - 2009年3月7日

2009/03/06

非正規雇用問題について、社会的コストから考えてみた

 あいかわらず、非正規雇用問題というか、働き方を巡る制度問題について考えているが、別のアプローチ方法として、こういった問題を個別労使関係上の労働条件問題と考えるのではなく、派遣労働という「いびつ」な就労形態において、雇用側が社会的なコストを「避ける」「逃げる」ことが可能となる結果、「不当な」労働が実態として存在してしまっているという社会現象と捉えてはどうかと、考えてみた。
 こうすると、非正規労働を使うことによって、
 ・社会保障コスト(生活価値 :憲法25条)
 ・労務調整コスト(人格的価値:憲法28条)
から逃避することが許されているという仕組みの是正方策を検討すべきだという、とりあえずの命題が出てくる。

 というのも、解雇権濫用法理とか、同一労働同一賃金など、個々の労働条件を強行規定的に制限しようという議論について、何というか「時期尚早」感があるし、立法論を展開できる程の議論の熟度がないという意味での未熟感も強い。また、圧倒的な景気後退局面において、「平時」としての適切な労働条件の在り方について実証的な議論ができる訳もなく、議論がイデオロギー対立化するだけで、当面、建設的な議論とならない気がするから。

 だから、「社会保障コスト」と「労務調整コスト」をきちんと雇用側に負担させるための方策について考えてみた。


1.「入りやすく」かつ「卒業させる」雇用保険・生活保護

 まず、社会保障コスト負担方策の前提として、まともな非労働者への給付制度を作らないといけない。そのために、

・生活保護について、「補充性の原則」を、就業活動への従事を条件として、緩和(雇用保険にこれまで非加入であった者、個人事業者)
 ・雇用保険への加入(権利/義務)を広く『非正規』にまで拡大
(1ヶ月以上の雇用契約、請負契約の場合には強制、それ以下の被雇用者、個人事業主は白手帳のように当面任意で仕方がないか)
・就労カウンセリングの高度化と義務化
(社会福祉士、社会保険労務士等の援助者体系を見直し、かつ、その専門性を高めて人材を育成)

といったことがまず必要だろう。
 さらに、「自立促進」という観点から、所得の上限は定めつつも、働きながら(あるいは、職業訓練及び求職活動を行いながら)失業給付や生活保護(生業扶助)の給付を得られる仕組み(運用の改善?)も検討すべき。まじめに働くと損だから、こうしないと、給付依存から脱却する方向でのインセンティブが生まれない。確かに、給付は増えるかもしれないが、就労後は納税者になるのだから、良い「人的投資」ではないのか?
 また、長期的な理念型としては、生活保護と雇用保険(失業給付)の支給及びサービス給付並びに援助者たるソーシャルワーク業務の「統合化」しないといけない。就労支援を、何というか転職コンサルの延長線で考えてはならない。就労できない、非労働力化してしまう要因は多様なのだから、就労支援は生活設計自体の再設計から必要になるのだから。

こういった給付・訓練の整備を前提として、まずは、派遣事業者による社会保険逃れを制約するため、

・雇用保険、厚生年金保険、健康保険に加入しない派遣事業者に対しては、厳しく派遣事業の許可取消を措置すべき

ということか(既に与党で検討開始らしい)。

 さらに長期的には、派遣先企業に対しても責任を問うことも適当だろう。例えば、派遣事業の許可を取り消された事業者との契約によって派遣されていた労働者との間で、その契約残余期間中につき、有期雇用契約を義務づける。当然社会保険料の負担も発生するといった方策で。
 また、本来社会保険逃れの摘発は労働基準監督署の責任なのだが、これが機能していないのは衆知の事実。といって、この組織を肥大化させるのもナンセンス。
 そこで、個々の労働者及び労働組合に、雇用主(一般企業、派遣元・派遣先事業者及びその経営者)に対し社会保険非加入に関する訴えを提起する権利を与え、民事執行手続(仮執行・強制執行)によって、未払いの社会保険料を徴収させ、国に代行納付できる制度も検討した方が良い。いわば、信託法上の受益権者の権利の類推、あるいは、国に対する社会保険権利者としての債権者代位権の類推という発想での、労働基準監督署の機能不全の代替ということ。

とにかく、派遣労働(非正規労働)という形態が、社会保険制度からの排除を意味したり、実務上本来負担すべき(社会的共助の)コストを雇用主が潜脱するための方便なるような事態を改善しなければならない。


2.非正規労働者のための労働組合制度

まず、団体交渉の実質化のために、

・派遣法上、労働組合の団体交渉義務者たる「使用者」(労働組合法第7条)に、直接の雇用者たる派遣元企業だけではなくて、重畳的に、派遣先企業を含める。
 (労基法、労安法、男女均等法などで定めるルールの遵守義務は、派遣法上明文で規定している)

 最高裁の判例では、実質的条件(「その労働者の基本的な労働条件について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合」)を備えていれば、派遣先企業も(派遣元企業横断の労働組合による)団体交渉の相手方となり得ることとなっている。これは解釈論であって、安定性がない(かつ、論者によっては、この要件は厳しすぎるとの評価もある)。
 そこで、派遣法において、労働組合法第7条の「使用者」に派遣先企業が含まれる旨、派遣法上に規定してしまうということ。

※労働組合法

(不当労働行為)
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

 派遣先企業の団体交渉拒否などが不当労働行為となれば、労働委員会の救済対象(仮処分、差止)になるし、労働組合法第7条には私法効果も認められ、一般不法行為が成立するとも解されるので、団体交渉を拒否された労働組合、労働者には、損害賠償請求権も認められる場合がある。
 もちろん、さらに将来的には、労働契約承継法のみならず、親会社などの現場を実質的に支配している会社に対する、団体交渉権についても考えることが必要かもしれない。

 個別の労働条件について、具体的な強行規定を定めることは、派遣労働者など、労使交渉の場面で不当に不利な扱いを受けてきた労働者を、団体交渉という形でエンパワーし、その結果構築される結果を吟味してからの方が良いのではないか(憲法27条よりも、28条を重視する視点)。
 この団体交渉の意義をより高めるため、団体交渉の「成果」が広く非正規労働者の個別労使関係にも均雫させる方策として、例えば、消費者契約法第10条のような一般条項を設ける形で司法救済を図る方策、労働組合法第18条のような地域労使協定を「派遣労働」等について横断的に設定する方策についても検討されるかもしれない。
 労使協定を企業横断的に整備する仕組みにより、労働条件の切り下げ競争を防いでいる、米国的な業種別ユニオンの発想に事実上近くなるのではないか(競争法上の手当も検討必要か?)。
こういう方策が必要となるのは、既存の企業別労働組合が、就労形態の多様化によって、「排除のメカニズム」となってしまっているから。だから、横断的労使交渉という形で、新しい問題意識からの、組合中心的労働法制への回帰を、労務調整コストの適正負担を雇用側に求めるためには、検討する必要があるのだろう。

 とにかく、労使交渉を通じて労働条件に関する合意を形成するためのコストは、憲法上当然に甘受すべきものであり、派遣や請負という労働形態が、この労使交渉のコストを潜脱するための方便となってはならない。

« 2009年2月22日 - 2009年2月28日 | トップページ | 2009年3月15日 - 2009年3月21日 »

2014年9月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ