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2009年3月15日 - 2009年3月21日

2009/03/21

住宅ローン破綻による生活破壊を防ぐためには

 この処,住宅ローンの破綻に対する懸念が広がっているきているようだ。この記事にあるように,「企業業績や雇用環境が急速に悪化するなか、2009年度以降の延滞や貸し倒れの増加を見越して、地銀が対策を急いでいる」らしい。
 その一方で,この記事にあるように,またぞろ住宅ローン促進策=ローン破綻予備軍増加策を発動するらしい,いやはや。
 ということで,少し頭の整理をしてみた。

○重要な目標
 今時の景気後退局面における住宅ローンの返済破綻が、その人(家族)の生活全体を破綻させ、(家計)消費の低迷をもたらし、更なるスパイラル的な生活破綻者の増加を招き、社会不安をもたらすことを防ぐことが目的。
 要すれば、住宅ローンの返済破綻者のローン債務の(法的)整理を促進し、かつ、その債務整理によっても、住宅難民、生活難民とならないようにすること。

○目下必要なのは、短期対策
 住宅ローンの利用条件等を政策的にどのように設定するかは、その時点々々における政策的必要性や経済情勢(マクロ経済情勢、不動産価格動向 等)に応じて、様々な制度設計があり得、理想的な統合的絵姿として単一の解がある訳ではない。
よって、破綻処理をあらかじめ制度的に構築しておくとは言っても、それは、「理想的な」住宅ローン制度を設計することが目的なのではなく、目下の状況において必要な住宅ローン破綻者の救済策という、短期(時限)対策であるという点を明確にするべき。

○注意すべきはモラルハザード
 「救済」策設計においては、「返済」に関する2種類のモラルハザード発生に留意。

・貸出金融機関:
住宅ローンの破たんを「救済」するために、当該住宅ローン債権の野放図な公的機関による買取り(目下のペイルアウト)を制度化すると、貸出金融機関の(今後の救済策を予想して)審査が極限まで甘くなる

・借入住宅購入者:
住宅ローンの破たんによるコストが限りなく低くなると、野放図な借入れを行い、破たんすれば良いということになって、返済努力をしなくなり、デフォルト率が(事後的に)上昇する

目下の米国のサブプライム問題では、「CDSによって、金融機関の」、「ノンリコース・ローンにより、住宅購入者の」モラルハザードが発生したことを、肝に銘じるべき。

○丁寧な類型化が必要
景気対策として抽象的に考えるのではなく、救済の対象となる家計の属性を丁寧に類型化し、把握して、救済策を講じることが重要。一般的な解消策は、肌理が粗すぎて乱暴な対策となってしまいがち。住宅ローンの破綻の原因と、その結果生じる社会的弊害とを、丁寧に類型化して、ローン破綻によって生じているコストをどのように軽減すべきかを論じることが必要。

○暫定的な対策のイメージ
・既存のローンによる住宅購入者の破たん時の「救済」策のみをあらかじめ準備
→ただし、基本的にモラルハザードを些かなりとも助長するのであるから、これはあくまで対象を時間軸上限定(ある時点からみて、既にローン契約の成立しているものに限定)して、少なくとも今後の「過剰」住宅ローン(=潜在的ローン破綻者)の増加を防ぐ。

・ごく短期の策として、既往の住宅ローン者に対する時限的(例えば、2008年度中に成約済み分だけを対象とする)な徳政令的対処

・ローンを返済による生活破たんを防ぐ観点から、「早め」の処理も検討
→民事再生法の特例により、早めの、例えば、失業はしていないが、予定賃金が得られなくなるので、ローン返済が無理という場合に、全責任財産ではなく、当該住宅資産と当該住宅ローンのみを切り離してのネットアウト(要すれば、通常、第1順位抵当が設定されているであろうから、その抵当権行使との引き換えで、残余の一定の債権放棄を強制する)を認める。
これらにより生じる金融機関の損害(の一部)を国の組成するファンドで穴埋め。その際、当該ファンドには、生活カウンセラー等によって、金融機関と個人の責任寄与を丁寧に分析し、ローンの軽減率を丁寧に査定すべき(双方のモラルハザードの防止)
なお、追加的な担保措置なしに、借入れ条件の変更(一定の範囲に制限)による負担の低減策(負債は残るが、居住可能)もあり得るが、このような策に公的助成を行うのは、借入れ側のモラルハザードを助長するし、潜在的破綻者予備軍が減少しないことから不適当。
 
・完全な失業者対策も必要
→完全に失業した結果、ローン返済が破綻した場合には、上記のような負債のネットアウト策(この場合には、完全ネットアウト=当該住宅ローン債権の完全放棄)と同時に、さら住居を失った場合の生活拠点としての賃貸住宅の整備(既存の未利用ストックの徹底的な発掘)と、失業してしまった人に対する生活保護上の住居扶助の提供の用意

 これらの対策を一言で言えば、住宅ローンという「重荷」を解消し、生活を維持・再建できるようにして、家計消費のスパイラル的な悪化を防ぐため、ノンリコース・ローンを事後的に作り出すということ。

○景気回復策としての住宅ローン支援の否定
→長期の借金を個人に促進する策は,景気対策としての整合性の方策だ。つまり金利変動との関係で整合性のない仕組みなのである。
 そもそも、住宅ローンの金利を人為的に引き下げて、住宅建設を促進するのは、金利上昇リスクを誰かが負担する必要があるはずなのに、そのコストを隠蔽しているので、非常に問題が多い。返済計画が、20年以上にもなるような借入れを景気対策として助長することは、政策効果の発露のタイミングと、その個々人への影響の発露のタイミングがずれているので、コントロールが難しく、地雷を経済に埋め込むことになるので避けなければならない。
 他方、賃貸住宅促進は、整合性がある。つまり、借入れにより、賃貸住宅を建設促進すれば、将来の景気上昇局面で金利が上昇しても、賃貸料の上昇により、返済をペイできるので、あまり問題ない。

○投資による景気回復の幻想
 このような意味で、家計「投資」、特に長期資金を要する投資を、政策的に助長するのは、「山高ければ谷深し」となるので、消費(家計消費)を確保する形での財政支出構造になる必要がある。いわゆる「成長の芽を含んだ景気回復」というのは、(有限責任制の元で、原資を提供した資金余裕者の負担で行われる企業投資はともかく)、こと家計に関しては「悪しき幻想」である。

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