« 2009年11月1日 - 2009年11月7日 | トップページ | 2009年11月22日 - 2009年11月28日 »

2009年11月15日 - 2009年11月21日

2009/11/20

そして、金融調節=財源対策

ここからの続き。


 景気回復策が模索されている現状においては、財政のファイナンス方策についても景気対策としての側面に留意しなければならない。つまり、財政支出のファイナンスを増税で賄うのでは、(限界消費性向の高く、流動性制約下にある者への所得再分配という限界的効果をのぞくと)総需要を拡大させる効果を期待できない。
 また、市中消化による国債発行では、結局既存の金融資産が国債に変わってしまい、一種のクラウディングアウトが生じることとなる(通貨増発効果が減殺される)。とすれば、足下においては、財政支出を増加させるためのファイナンスは、国債増発、それも通貨増発効果を併せ持つ、中央銀行引き受けで行うべき状態にある。

 この点は、日本銀行単体の金融調整の効力が低下していることからも、支持されよう。というのも、日本銀行による従来型のインターバンク市場を中核とする金融市場経由の金融調節では効果がなくなっている(銀行の貸し渋り現象や企業の資金余剰主体化)。そもそも、金融機関の信用創造行動が、オーバローン、オーバーボロウーと表された「銀行の積極貸し出し行動」から大きく変化せざるを得ない時代において、銀行の貸し出し行動を前提とした制度設計では、意図した金融調整機能が発露しないのは当然である(また、これが、日銀は受動的金融調節しかできないという日銀理論の「論拠」となり、日銀のパフォーマンスの悪さの免罪符となっている)。
 また、更にいえば、動学的効率性条件が満たされていない、つまり「その経済における投資収益率が成長率を上回る」 という条件が満たされていない現状の日本経済では、投資行動を「喚起」するタイプの金融マクロ経済調整手法は意義を持たないといわざるを得ない。

 この点、直接給付的手法を財政支出の中核的戦術として採用し、そのファイナンスを中央銀行引き受け=通貨増発で執り行う場合には、対象を社会的弱者という一般的には消費性向の高い者に調整することによって、直接消費を喚起するという効果を有し、かつ「金融政策」の経路としても、確実に通貨増発効果を期待できるということから、金融政策と財政政策の適合性が高い政策ミックスとなると評価できよう。

 なお、国債増発というと、将来への負担の先送りだという批判が脊髄反射的に繰り出されるが、日銀のバランス・シートを拡大させたままで維持すれば、「負担の先送り」という議論は成り立たない。つまり、国債を日銀引き受けで発行し、その国債の償還期限が到来した暁には、その借り換え原資を新たな日銀引き受けの国債で調達すればよい。これにより、日本銀行のバランス・シートの額は維持され通貨の縮小を招かずに済むことになる。
 金利の問題についても、日銀引き受けであれば、日銀への利払い分をそのまま国庫納付金として国庫に償還させればよいのであり特段の問題ではない。国債の市中消化とは、消費税を含む将来の納税収入を金融資産保有者に対し再配分することを約束するものであり、所得・資産配分が非常に逆進性を有している。通貨供給を増加させることが必要とされていて、中央銀行引き受けによる国債増発の余力の大きい現状の日本においてあえて逆進性の高い原資調達を行う必要はない。
 この面からも、景気対策(や成長戦略)のための財政支出原資は、中央銀行引き受けで調達されるべきである(少なくともこの1~2年間は)。


そして、まだ続くのです。

2009/11/19

中核的財政支出方法論~ターゲット戦術の破綻(信用失墜)~

ここからのつづき。


 ここまでの戦略論、つまり政策の目標設定論に続いて、どのような財政支出を構想するべきかという戦術論が必要となる。
 ここで振り替えなければならないのは、一時期の世論調査における「公的支出の無駄排除、官僚嫌悪」と「社会福祉の再建」とが同居している点である。この点をとらえて、一方の論者は「市場主義」(小さな政府)が指示されていると解し、他方は「福祉社会」(大きな政府)が指示されていると主張し、さらに他の論者は、日本人世論の矛盾をなげくといった議論が展開されていた。
 しかし、これは何ら矛盾なく解釈することができ、いわば「ターゲット戦術の破綻」と解釈することができる。

 何らかの経済政策、特に「経済成長志向の政策」と称されるものについては、「選択と集中」の美名の元に、政策リソースえをい特定に経済主体や経済対象(地域)に「ターゲット」を絞って支出されることが多かった。問題は、その「ターゲット」選定の非効率性である。この選定行為は、政治的に決められるか、官僚機構によって決められてきたが、その決定の成果がこととごとく失敗しているということである。典型的には、技術開発政策の支援先決定と公共事業の箇所付けである。これらの選定行為は、その経済成果を強調しようとすればするほど、矛盾を露呈することになる。つまり、経済的にペイするのであれば、そのメリットを享受する人々がコスト負担するはずであって、政策的支援、つまり税金投入は必要ないということである。とすれば、費用便益分析の理論的には、公的政策の対象になるということは経済的失敗が確約されているとも言い得る。
 また、所詮政治プロセス、官僚機構プロセスには「素人」集団であし、選別課程を担える能力をもっていないのである。また、「専門家」を活用するにしても、相当厳しい責任追及制度を含めたエージェント問題を解消する手法を確立しない限り、素人集団は専門家によるレント活動に利用されるだけに過ぎない。
 「公的支出の無駄排除、官僚嫌悪」とは、このターゲットを政治プロセスや官僚プロセスを通じて選定することの不効率、不公正を国民が実感しているということの表象であると考えることができる。国民は公的経済による社会福祉の充実を指示しているのであろうが、それが行政的に「勝手に」選別された経済主体に「給付」されることを忌避しているのであって、いわば「ターゲット戦術の破綻」とでもいうことが出来るであろう。
 
 では、どのような政策実施プロセスを考えればよいのか。
 まずは、どうやっても完全な透明性確保の難しい「供給サイド」の事業主体への「補助」は支持されない。これでは、同じ「過ち」の繰り返すとなるからである。   
 やはり、需要者=消費者=市民側の購買力を「エンパワー」するバウチャー型の直接給付を中核的な財政支出の戦術論とすべきである。この直接給付の対象は制度設計によって広くも狭くもできるが、生活保護給付にみられるような不透明な支給基準設定や支給対象認定を排除するために、その目標設定と実施体制に関し、公務員に対する責任追及の仕組みをしっかり作ることが重要である。
 また、足下で問題となる景気対策上の失業者訓練を時限的に予算化するにしても、雇用調整助成金を浪費する雇用企業側や資格スキルの訓練をする教育機関といった価値・サービスの供給側への助成ではなくて、雇用される個人や訓練を受ける個人をエンパワーするために需要側への支援を基本とする制度設計をおこなうべきである。

 このように需要側をエンパワーすることによって、市場による評価という選択メカニズムが機能することになる。これは、政治的、官僚機構による「セレクション」に飽いた国民感情にもフィットすることになるし、官僚機構等の素人性打破にもつながる(その点では、エコポイント制度は、環境効率性の高い商品に対する市場選考メカニズムを発露させる契機を内包しており、さらなる制度の精緻化の研究余地のある仕組みであろう)。
 政府は、この需要側エンパワーによる市場選考機能の「回復」のための措置、つまり古典的な「市場の失敗」是正策に自らを縮減させるべきであって、需要側の選考能力をエンパワーするような、情報流通の確保、多様なサービスの展開の認識力強化(支援対象メニューのローリング・スパンの短縮)などに努めるべきなのだ。


まだ、つづく。

2009/11/18

「成長」戦略についても

ここからの続き


 景気対策と同時に、(政治的には)比較的長期の経済成長を志向する政策論議も必要とされている。しかし、景気対策においても、その総需要管理の側面だけではなくて、その総需要の行く先について、(あまり拘束的ではないにしても)配慮を欠かすことはできない。つまり、経済成長政策も景気対策も共に、資源再配分、リソースのミス・アロケーションをより政策的に望ましい方向へと「是正」する方策として立案されるべきという基本姿勢を崩してはならない。
 重ねて重要な点は、仮に成長戦略と称する言説において、戦略・政策の対象となる経済活動分野を指示するのであれば、その対象経済活動分野に経済リソースを移動させなければならず、「政策」とは畢竟、その移動を促進するための措置であるというという自覚を持つ必要があるということである。つまり、経済リソースを「いつまので、どれくらい」移動させるのかという政策目標が設定されなければならないということである。
 
 例えば、その分野が社会福祉サービスということであれば、(先にも述べたように)社会保険などへの公的支出の計画的増加ということであるし、環境ビジネス分野ということであれば、時間軸上で慎重に設計されており、不可能を強いることのないような、技術面・設備面について準備時間を繰り込んだ、規制導入計画へのコミットメントである。

 時々に行う景気対策は、失業・稼働停止しているリソースの転換促進、その促進による摩擦の緩和措置として方向性を指し示して、時限的に実施されるべきものであり、成長戦略と整合性を持って構想することは十分可能であるし、同じ志向性を共有する景気対策と経済成長「戦略」政策のマッチングこそが、望ましい経済政策のあり方なのではないか。


まだ、つづく。

住宅投資を拡大させるための究極の税制措置とは?

 またぞろ、景気対策などといった話が出てきている。恐らくその中では、住宅投資を促進することによる景気対策という議論も出てこよう。住宅投資の促進を志向するのであれば、住宅ローン減税などというよりも、固定資産税や地価税といった土地資産の保有に対する課税を大幅に強化すれば良い。
 
 目下の日本において住宅投資を阻害しているのは、土地取得費用が高すぎることである。この土地価格の高止まりが、土地の利用効率の高さを表象しているのであればまだしも、実際のところは一種の「バブル」と評価せざるを得ない。
 土地資産が、ある意味で金融資産として交換手段/価値補増手段として利用され、その実物資産としての使用価値以上の価値を有してしまっており、土地の移動、そして土地の有効利用が妨げられている。
 いわば、日本の土地の必要以上の価格高止まりが、経済資源の効率的なアロケーションを様々な面で阻害していると言えるであろう。

とすれば、金融商品化している土地を実物資産としえ有効活用させるためには、その予想収益の高さを引き下げる必要があるということだ。それが、”市場”の調節で到達できないのであれば、市場を成り立たせている条件である税の”介入”によって達成させればよい。

 土地保有に対する課税を強化することにより、土地価格が低下すれば、住宅投資も盛んになるであろうし、保有コストが高くなることにより、非効率に利用されながらキャピタル・ゲインねらいで”退蔵”されている土地の有効利用が、否応なく進むことになろう。
 さらに、このような措置を通じて、土地の保有状況によって生じてしまう格差の是正にもつながるであろう。

2009/11/17

足下で必要とされる経済の舵取りの基本戦略(哲学)

 またぞろ、経済対策という議論もあり、同時に、経済成長戦略(愚妹な表現)なるものが、無駄排除に対するガス抜きなのか、「成長戦略がない」というごくごく一部の論者の言説に対する反論なのかはわからないが、出てきている。

 そこで、少し現状において必要とされる経済政策、経済運営の舵取り方針についてメモを作ってみた。

 まずは、景気対策(失業対策)から。


 目下の景気対策、特に雇用対策において検討において、着目されているのは、介護や保育等の社会福祉サービスへの就労支援政策である。しかし、この類の政策については、補正事業で行うことへの矛盾が指摘されている。
 確かに、これらのサービスにおける就労が拡大しない、つまり、これらの分野への労働異動が生じないのは、現状では、これらら社会福祉サービスにおける賃金レベルが低く、魅力的でないからである。この問題を解消するためには、(公定)賃金を上昇させるべく、恒常的に財政投入(資源再分配)することである。
 一方、景気対策として時限的な補正事業で行う場合によって一時的に雇用条件が好転するとしても、フォワード・ルッキングな(先行きの見通しに基づいて行動計画を設定する)経済主体は、雇用主であろうが被雇用者であろうが、将来の条件悪化を見越して、これらの分野にはリソースを移動させることはない。
 この点において、景気対策としての「社会福祉分野の重視策」が矛盾しているとの指摘も故なきことではない。

 この「矛盾点」を解消していくためには、単一時点の財政支出事業だけで政策を完結させるのではなく、複数のタイミング(時間軸)での事業の組み合わせによって、社会福祉分野における雇用対策を構想するべきなのである。
 その第一は、(既に着手されているところであるが)失業者を中心に、介護/看護/保育(学童保育)/障害者支援を担う者としての資格・スキル取得の場を提供し、その取得の費用や取得に専念する期間の生活費(特に住居費)の援助を行うというもの。この事業は、失業対策であり、原則として時限措置=補正予算によって行われるべきものである。
 経済主体のフォワード・ルッキング性を前提とすれば、このような労働移動(リソースの再アロケーション)を支援する取り組みは時限措置であるべきであり、少なくともその枠拡大は時限措置として行われるものであることが宣言されなければならない。そうすれば、この期限内に支援措置を受けるべく経済主体の行動を促すことになろう(時限措置化しなれば、今決断しないことにオプション価値=支援措置を受けることを先延ばしにすることによるフリーハンドの維持という価値が生じるので、支援措置を受けようとしないであろう)。

 第二に講じるべき策は、社会福祉サービスに投入される資源、特に財政支出の投入を「恒常的」に増加させることでである。この財政の安定的投入という方策によって、将来の雇用条件の改善に対する確信が経済主体(雇う方、雇われる方双方)に共有されない限り、労働力の移動は生じない。時限的な支援措置の発動だけでは効果が発現しない。やはり、主たる政策は、この労働移動の行く先を定常状態として描き出すことであり、補正事業としては、その労働移動を促進するための支援策を講じるというミックス戦術が肝要なのである。

 財源論的には、第一の時限措置政策のための予算措置は、(足下の)補正予算で措置すべきものであろう。もちろん、こういった類の措置が、来年度も必要となる可能性は高いので、事業が複数年にわたることが否定されるものではないが、あくまで時限措置として制度上位置づけられるべきものである。
 第二の恒常政策のための予算措置は、本来的には当初予算で措置すべきものであり、景気対策的議論の上では、その「前倒し」措置ということになる。とすると、原則的には、財政支出の先の転換を伴う必要があって、既存支出の大幅な切り込みが必要となる。
 この切り込まれた先において、失業合が生じるようであれば、まさにその分野において補正事業として、この分野からの労働退出=社会福祉分野等への労働移動を促すための時限措置を発動し、その不況和音の低減、激変緩和をすればよいことである。


以下、まだ続く。

« 2009年11月1日 - 2009年11月7日 | トップページ | 2009年11月22日 - 2009年11月28日 »

2014年9月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ