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2009年1月25日 - 2009年1月31日

2009/01/31

相続税と高齢者医療制度

高齢者の中にも豊かな人は確実におり、年齢で医療費を区別する理由はないということだ。原田氏が言うとおり、高齢者は貧しく、治療を受ける回数も高いため、医療費の自己負担分を減らすべきだという議論には無理がある。就労しないという高齢者の特徴は割り引くとしても、日本の高齢者は平均で見る限り所得、消費、金融資産・住宅資産・土地資産といった側面でも現役世代と比較して豊かである。少なくとも豊かな高齢者は、年齢という差別を乗り越えて自立するべきであることは必定であろう。

高齢者は本当に弱者なのか?

約1年ほど前は,来る日も来る日も,ワイドショーのネタであった「後期高齢者医療制度」。今では,派遣切り,派遣村に押されて,話題になることはほとんど無くなりました。しかし,改めて,この指摘は全くもって正当かと。

自分自身も、一時期,後期高齢者医療制度についてそうとうな反発を感じていたが、マクロの人口学的状況を踏まえれば、高齢者の医療費負担の問題について、マスコミの喧伝する、「極端な事例」に惑わされ、さらに政治的アピールのための過度の強調に惑わされてはならなかったのだろう。

 現状の後期高齢者制度では、相当程度の高齢者の「所得状況」には配慮した方策がとられている。逆に、現役世代並の自己負担の範囲が「限定」されていることの方にこそ問題がある。直接の関係はないにしても,医療資源が適切に出産や小児診療に回らない事の遠因ではあろうし,より直接的には,健康保険組合が拠出金に耐えられなくなってきている。

 制度の作りが,乱暴なのだと思われる。老人医療「保険」の仕組みについても,包括的な仕組みの中で,きめの細かい負担能力の査定を行うべきだとう思う。そもそも,医療リスクの高まる集団だけを分離して,社会保険を構築するというは,保険数理からいって、そもそもおかしい。勿論,社会保険は,民間保険のように厳密な拠出負担均等原理が求められないとしても,負担能力をそもそも制度的に期待していない高リスク集団を分離するというのは、コストの強制的な削減を意図していると勘ぐられても仕方あるまい。
 要は,普遍的な医療保険の仕組みの中に,高齢者も年齢の如何に拘わらず加入してもらい,原則は現役世代と同じように,保険料と自己負担分を払うという仕組み。ただし,当然稼得能力に劣る人には,保険料と自己負担分の減少をきめ細かく認めれば良い。
 また,負担軽減を求める者には,フローの所得だけでなく,資産調査(ミーンズ調査)も行えば良いと思う。現住の住宅はともかく,金融資産を豊富に持っている高齢者については,保険料も自己負担分も原則通りに払ってもらうべきだ。
負担軽減についても,保険料軽減パターンや自己負担軽減パターンなど,いろいろな選択肢を用意すべきだ。健康に自身にある人は,保険料軽減パターンお選ぶだろうし,資産の少ない人は,ショックアブソーバーとして、特定時期の出費ヘッジとして自己負担軽減パターンを選ぶかも知れない。

 勿論,資産調査には,それに付帯していろいろ問題が出てくる。資産隠しも横行するだろう。そこで,一案。
 相続性の仕組みを活用してみる。
 医療保険への加入状況、保険料納付状況や自己負担分状況によって、相続税の税率や適用段階を変更するのだ。つまり、保険料を原則通りに払っていた被相続人についての,相続税の限界税率を少し下げる等の措置により,高齢者が医療費負担の「貢献分」を相続税の軽減という形で評価するのだ。
 こうすれば、メカニズム・デザイン的に、金融資産などの流動性の高い資産の保有者に、保有の申告インセンティブが生まれると思うがどうであろうか、

そもそも,最近,相続人の年齢が平均60歳を超えているそうだ。つまり、社会保障の負担者と受給者という意味での世代間への所得分配機能が,相続には消滅しつつあるということ。金融商品を高齢者から高齢者に相続させていては、この国の世代間の公平はいくらまっていても進まない。
 事業承継関係でしか、相続税は話題にならないないが、今後の世代間の公平や、高齢者世代内の公平を考えれば、資産配分の不平等を調整するべく、相続税を「社会貢献」へのインセンティブに使うのも一つの手だと思うが。
 この点,この国会で審議されることとなる税法改正には,興味深い条項が入っている。

八 その他(附則関係)

2 税制の抜本的な改革に係る措置

⑤ 資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討すること。

所得税法等の一部を改正する法律案要綱(財務省)


 同趣旨のことは,自民党平成21年度税制改正大綱 9頁にもある。

 医療保険(介護保険でも同じ論理が成立するとは思う)と相続税のリンクは,突飛かもしれないが,ベーシックインカム論や給付付き控除の議論にあるように,税制と社会保障は本来分離して議論されるべきものではないはず。
 行政組織の分立は,仕組みの本質が相見えないことの根拠にはならないのだから。

リフレ派への愚痴

僕自身は,今の日本にはリフレ政策が必要で,通貨=信用を増発して,経済活動を活発化させることが大事だと思っている。だから,財政法5条ただし書の発動も真剣に検討するべきだと思っている。

ただ,最近のブログなんかにおけるリフレ派の皆さんのお言葉を見ていると少し「?」な感じがすることもある。要は,経済回復,経済成長することが最優先で,資源の使い道というか,動員先は,何でも良いといった乱暴な議論をする方がいるからだ。定額給付金の議論について,某かの効果はあるに決まっているのだから,政策としてアプリオリに正しいといった議論をする方がいるが,こういう言い方はいただけないと思う。

(稀少な)資源をどのようにアロケートすることで,経済厚生を高めることができるかという議論をするときに,やはりアロケート先を真摯に検討することは大事だと思う。一時の小野先生や吉川先生といったマクロ経済学のオピニオン・リーダーがそういったニュアンスの行動をとった時期があった(適正な公共投資先を考えるのはマクロ経済学者の仕事ではない的な・・・・)。勿論,今は違うけど。でも,リフレ派の論調の中には,こういう発想があるような気がする。

リフレ政策によって,マネタリーな理由で捨てられていた労働力が動員可能になってときに,その労働力,つまり労働者の皆さんにどこで働いてもらうことが,経済全体の厚生を高める事になるのかというのは,マクロ経済政策上の重要な問題だと思う。

DSGEの発展が改めて明らかにしたように,年々の経済活動の成果,つまり国民総生産を投資(=将来の消費のための実物財増加寄与)と消費にどのように配分するかによって,消費の動学パスが変わる訳だし,現在の日本のように,投資の効果(投資収益率)があまりに低いときに投資促進的な措置を講じるのも愚論だと思う。

だからマクロのリフレ政策と,セミマクロというか,複数部門(例えば,消費・サービス財部門と投資財部門)を前提として,財政や信用をどの分野に配分して,労働移動を促すかというのは,同時に検討すべき問題なのではないかと思う。

そういう意味で,リフレ政策を行う場合に,中央銀行がただ市中から入札で金融資産を買いまくるよりも,長期国債を買わせて,財政によって,意図的な資源配分を行う方が,合理的ではないかと思う。今回の景気「回復」局面のように,輸出にばかり依存して,非居住者の厚生に寄与するような形で国民総生産を作り出しても,いざとなった時に誰(他国)も助けてくれないのだから。

こういう発想は,ハーベイロードの幻想なでしょうか。愚痴でした。

消費税の電子化

景気対策って国が無理に無駄遣いするより、個人消費を刺激する仕掛けをつくった方が効率がいいんじゃないか。定額給付金の評判は悪いが、確実に貯蓄に回らない方法はある。欧州で検討されているように消費税率を下げればいい。税率そのものを触るとシステム等の事務手続きが大変だったら、決済サービスの利用額に応じて還付すればよい。

「定額給付より消費税還付は」~雑種路線でいこう~

 消費税減税による,特に消費回復策というのは,是非検討されるべきだろう。

 この点を検討するときには,消費税率の変動の消費に対する弾性値が問題となろう。ただ,この弾性値はマクロではそれほど大きくないのではないか。一般的に税率が,経済行動に及ぼす影響は,実証的には低いことが多い(所得税率と労働供給の関係に,有意な正の相関はなかなか出てこないらしい)。直感的には,消費税率が1%下がったからといって,米を多く買おうという行動に出ることもないし,パソコンを新調しようという行動に出ることはないと思う。

 勿論,高額商品については,違う結果も出てこよう。例えば,車や住宅の場合,税率の変動が,実質負担に目に見えて効果を出すので,行動を変えることもあるでしょう。しかし,この効果についても,(耐久財の将来の需要の前倒しではなくて)新しい実需を喚起するほどの効果があるかは疑問。ただし,将来の消費税率引き上げとセットで行えば,消費の動学パスを変化させ,消費の前倒し(先食い)効果があるので,景気刺激策の効果は大きい。今回の景気対策における住宅投資減税には,このような効果が見込まれる(ただし,住宅政策自体としては,私自身は疑問を持っていますが)

 もう一点考えなければならないのは,消費税税率減税が,究極の「薄く広く」対策だという点。定額給付金についての真っ当な批判は,要すれば,費用対効果が悪いということにつきる。2兆円のうち,実質的な消費に回る分が4割程度ということであれば,限られた財源から2兆円を本当の実需に使ってしまう方策,あるいは実需に使い切って居しまう者に配る方が効果的。

 ここで,電子的な消費税の還付というアイディアに,光明が出てくる。要すれば,電子的取引なのだから,IDを取引情報に付加することは簡単な訳で,所得の低い方,例えば,生活保護世帯や国民年金のみの単身世帯等生活困窮者の方に,消費税還付IDを提供して消費税を下げれば効果はある。最近のコンビニはみな,ポイントカードを発行してるから,ここに還付するのも手。
 
 メカニズム・デザイン上消費税の電子化というのは,きめの細かい税率設定と,還付=給付と負担の平準化を可能とする上で非常に重要なフロンティア。昨今,給付付き税額控除の議論や,ベーシック・インカムの議論が出てき居るが,消費税の電子化を通じた,ポイント還付というのが,即効性のある仕組みだと思う。

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