« 東北関東大震災において必要とされる復興事業のイメージ | トップページ | 3月11日という偶然の一致 »

2011/03/19

震災復興のための広域搬送と受け入れ先確保のために総理がすべきこと

徐々に交通拠点網が復活しつつある中、ここ1ヶ月については広域搬送網の整備が問題になります。これなしには、被災地への物資補給も被災地からの重傷者の広域搬送による被災地負担軽減もままなりません。報道を見る限り、あまり優先順位をつけずに場当たりで「できたところから」になっているようですが、これでは、日本全体に「血栓」を広めているようなものです。いつまでたっても効率化されません。
いずれにせよ、短期の受け入れ施設(宿泊施設、要介護者の受け入れ、保育所、病床)の特例的整備を同時に実子しつつ、広域搬送の「定型化」、つまりルートの固定化が必要になります。また、この瞬間は、広域で被災地に「ものを入れる」ということだけに注力されていますが、向こう1ヶ月程度の期間では、被災地の負担を低減するため、乳幼児(母子)、病者、老人、障害者等の弱者を被災地域から運び出すことが、全体の負担を低減させることにつながりますから、こちらを計画的に進める必要があります。
 このためにも、比較的余裕のある遠隔地の余裕のある空間に空路及び海路で人を搬出するロジスティックを構築するべきです(前回のエントリーにあるように、関西経済圏との関係から空路は静岡、海路は金沢を拠点にするのが良いと思います)。


 さらにまた、ここ半年程度では、被災者の受け入れ先(居住場所)確保が問題となります。この点での最大にポイントは、被災者を受け入れる自治体等の組織体が得をするメカニズムを早急に講じる必要があるという点です。これは、日本国の予算案発議権を憲法上専有する内閣の長たる総理の決断でしか可能とはなりません。
 つまり、23年度初頭に組み替えられるであろう補正予算において、地方交付税の算定基礎に、被災4県(原発の関係で茨城を入れます)に住民票を有する者が半年以上滞在した場合には、一人につき数百万を交付税として交付すると総理が言明するのです。あるいは、短期1ヶ月程度の被災者受け入れ経費として自治体が負担した分は、23年度補正予算で全額補助すると言明するのです。
 そうすれば、日本中の自治体が被災者を受け入れようと競争することになるでしょう(ただし、交付税不交付団体である東京都は除かれますが)。
介護施設についても同様で、被災地からの要介護者等を受け入れれば、国庫からの自治体の保険会計への支出増を背景として点数を上げるとするのです。この資金については、介護保険自体に恒常的に必要となる資金はありませんから、復興債で賄っても問題はありません(ちなみに、復興資金調達の問題については、矢野浩一先生が素早くモデル解析をなされています http://dl.dropbox.com/u/2260564/tohoku/tohoku001.pdf )。
 先に述べたように、被災者の広域搬送先では特例的な受け入れ施設整備が必要になりますが、緊急的に整備された人的・物的ストックで移動可能なものは、今後の被災地における復興住宅整備に転用することも必要でしょう。
 また被災避難者に介護福祉士、保育士、理学療養師、看護師等の資格をとるための研修・教育を避難地の専門学校等で行うという手がありますが、そのような被災者のための介護士、保育士教育についても、そのような生徒を受け入れた専門学校や看護学校に雇用調整助成金から支援を出せばよいのです。
昨晩のような総理演説よりも、被災者を受け入れた者・組織体には、最大限の財政支援をするという「内閣の重要政策に関する基本的な方針」を論じることが総理の仕事です。おそらく、現在の日銀であれば、そのために必要な復興債引き受けをする胆力はあると思います。

 なお、被災者の皆さんへの住居対策については、より長期的な視点から、現在の「ストック充実策」のみではなく、流通整備策として、以下のような議論も必要かと思います。

○長期的に人口減少国家であり、かつ、目下のように「明日住むところがなくなった」という者、あるいは劣悪な住居に追い込まれてしまう世帯が増加するという世情における政策目標として、「優良な住宅ストックへの投資拡張」(都市整備を含む。)を設定するという発想自体が、適合的でない。

○目下必要なことは、「住宅賃貸市場」の「機能強化」である。具体的には、賃貸住宅の稼働率が下がりながら、賃貸料や賃貸条件(敷金条件、保証人条件)が利用者に有利な方向に動かない現状をどう打破するか、ということ。

○ごく短期的には、資金弱者が住宅を借りる場合の最大の障害である「敷金」と「保証人」について、この住居契約条件を設けない賃貸業者に対して、資金融通(一定期間の賃料未払いと原状復帰費用の保証)をすることが求められる。これは、生活保護制度と歩調を合わせて行えば、「窓口」に金を積むこと(見せ金)で、生活保護費用の支出を減少させることができる。

○中長期的には、賃貸条件(単純な家賃レベルだけではなくて)において、障害となっている条件、より具体的には、入居時・転居時に必要となる固定費を減少させることが重要であり、そのような入居条件の誘導方向に合致する賃貸住居への投資を促進するような政策(新設、改装費用の融資の条件緩和、あるいは、入居者リスクを保険的にシェアする仕組み=入居者信用リスク情報の共有)が必要である。

○このような仕組みは、特に地方公共団体が、管轄下のどの地域に住民という担税力を集めたいかという観点で、町作りの構想、職住接近(生活支援サービス拠点をどこに)の構想と整合的に進めることが適当であることから、各種の独立行政法人の窓口と市町村が連携することが重要であり、国の資金を交付税等のメカニズムで分配する形で実施する方が良い。

○いずれにせよ、住宅ストック投資の「拡張」によるトリクルダウン論は、
 ・住宅ストックの数量的需要が人口学的に減少する日本においては、スットク投資は無意味であり、これを強行すれば住宅バブル(将来的なローン破綻潜在者の蓄積=被災者の困難の二重化)を招く
 ・住宅ストック投資への税制面、金融面での優遇は、資金保有者(信用力の高い者を含む。)への助成政策であり、逆進的な面が強い
という観点から、不適当である。

○とにかく、スットク重視とトリクルダンウン論という発展途上国的発想から、既存の住宅ストックから生まれる住宅サービスというフローの質の向上と円滑流通(フローの資源配分の効率性重視)という先進国的、成熟国家的発想への転換が必要。

« 東北関東大震災において必要とされる復興事業のイメージ | トップページ | 3月11日という偶然の一致 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

経済構造の改善」カテゴリの記事

統治のあり方」カテゴリの記事

財政政策」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/81793/51160982

この記事へのトラックバック一覧です: 震災復興のための広域搬送と受け入れ先確保のために総理がすべきこと:

« 東北関東大震災において必要とされる復興事業のイメージ | トップページ | 3月11日という偶然の一致 »

2014年9月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ