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2011年10月23日 - 2011年10月29日

2011/10/27

営利性と組織法制度の不整合

最近、非常に気になっているのは、成長分野(?)としての、農業やヘルスケア、グリーンエネルギーといった分野は、典型的な規制産業で、「営利法人」の参入規制がなされているが、この分野の成長を期するのであれば、規制を緩和して、「株式会社」の「自由」参入を認めるべきだ、という議論。
これ一見、「もっとも」と思える部分もある。そもそも、これらの分野でビジネスを継続的に行おうと思っているのであれば、そのためのリソースを調達する必要があるのだから、何らかの対価獲得が必要なのであり、現にどの分野においても利益は得ている。農業だって、農家の人々は農産品で稼いでいるし、医療法人だった理事や従業員たる医療従事者に給料という形で利益を分配している。 再生エネルギーの場合には、発電自体というよりも送電網を電気通信事業法のように「解放」(=接続義務)していないことに問題があるので、ちょっと参入者の直接的な参入規制とのとちょっと違う面がある。

要すれば、農業やヘルスケア、グリーンエネルギーといった分野において、営利事業者が事業活動を行うこと自体は可能なのであり、規制緩和により営利法人が参入できるようにしろというの、現時点の言葉の厳密な意味からするとおかしい。ポイントは、株式会社が、農地を買ったり、病院を直接運営したり、送電網に「自由」に接続できるようにすることが必要かどうかということなのだろう。
おそらく、グリーン発電に株式会社が参入して、一定の技術的条件の下に地域独占の電力会社の送電網に必ず接続できるようにすることは何の問題もなく合理的であると思う。で接続させて流される電流の質を規制するのは至極まっとうな規制であり、薬事法違憲判決の趣旨からしても、行為規制をなすべきで、それで十分であり、それを体現したのが買取法。とすると、別に株式会社、さらに事業者である必要すらないということで、これは解決。
他方、医療や農業は違い、株式会社を入れることが、日本のこの分野の構造問題をすべて解消する「魔法の杖」でるかのような主張すらあるが、これはおかしいと思う。というのも、農業全般や医療サービス全般を展開する組織のあり方として、株式会社という手法が適当なのか疑問があるからだ。なお、ここでいう株式会社とは、会社法で定義する株式会社というよりも、金融商品取引法の規律を受ける上場株式会社という意味で使っていることに注意されたい。会社法に則して言えば、譲渡制限株式を発行している公開会社が近いであろう。このような株式を譲渡自由の原則におく株式会社という存在の歴史は、決して古いものではなく、せいぜい遡れても19世紀末に成立した法的枠組みだ。この枠組みは、大きな固定資産を作り出すべく、市場から巨額の資金を調達するために考案された方法であり、そのような資金集中のインセンティブを維持するよう最適設計されているもの。
他方、農業や医療サービスが、そういった巨額の資金調達を必要とする部分がある場合もあるであろう。例えば、陽電子診断装置などの大規模な先端医療機器をフルスペックで備えた医療施設や、平野部を非常に広汎に整地し機械式で行う規格品的な穀物生産農場などは、大規模資本を集約して、その利益を分配するという組織形態が適当であることは理解できる。しかし、医療や農業はそうではなくて、巨額の資本を必要とせずに、規模を拡大することなく丁寧なサービスや労務を提供することで維持されるという組織運営もある。それは例えば棚田のような労働集約農業であったり、往診などをきめ細かく提供する必要のある診療所など。そういった分野に、株式資本を入れて出入り自由にすることが不可逆的な社会システムの変化、すなわち破壊を招くことになることは必至だろう。こういう分野と株式会社という法システムが、インセンティブ構造の上で整合性がないことは、コムスンの例を見れば明らかだろう。
もちろん、国民の努力によって維持されている医療保険という社会資本や日本の国土という土地資本の利用可能性が、特定の既得権者に囲い込まれていることは問題であるが、その利用可能性を何の安全回路ももうけずに、本来そのような「資本」を生産要素として利用することがインセンティブ構造上不整合な組織に、解放するというのも、愚かしいことである。
そういう意味では、先にも述べたように、どの分野でも営利を追求するというインセンティブは働いているのであるから、社会資本や自然資本をどのような組織体に解放することが適当なのかを、その資本を活用して、どういう形態の事業を行おうとしているのかに応じてきめ細かくみることが必要なのだと思う。

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