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2014/09/13

対個人サービスの市場に生じたデマンドショック(観光バウチャー、スポーツバウチャー、外食バウチャーのススメ)

全産業活動指数の4-6月期は前期比▲3.3%低下と、四半期の全産業活動指数としては、極めて大きい下げ幅となりました。現在提供させていただいてい る2003年からのデータでは、この▲3.3%より大きい四半期の下げ幅は、いわゆるリーマンショック後の最低水準となって2009年1-3月期の前期比 ▲6.3%のみです。リーマンショック直後の2008年10-12月期ですら▲2.1%で、この4-6月期ほどの下げ幅とはなっていません。

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また、この4-6月期の全産業活動指数の低下の特徴は、その低下幅の大きさだけではなくて、第3次産業活動指数の低下寄与が大きいということです。 第3次産業活動が表象するサービス産業は、製造業に比べると余り変動せず緩やかな上昇トレンドにあります。よって、全産業活動指数が低下するときには、鉱 工業生産指数の低下寄与が大きいことが一般的です。実際に、今年の4-6月期より下げ幅の大きかった2009年1-3月期は、鉱工業生産▲20.0%、第 3次産業▲3.1%、その前期である2008年10-12月期では、鉱工業生産▲11.3%、第3次産業▲1.7%と、圧倒的に鉱工業生産が低下していま した。

ここからすると、今年の4-6月期に日本の産業、特に第3次産業に大きな経済的ショックが発生したことは否定できないものと思います。

 

さて、このような大きな経済産業への大きなショックが、どのように生じているのかについては、次のような議論があります。

” なぜみんなは不況を理解するにあたって「需要」が鍵になると考えるのだろうか。「需要側」の解決策が簡単、あるいは単一原因説が「セクシー」であるからだ けじゃないと僕は思う。僕が思うに、これは価格に関係しているんだ。基本的な供給・需要グラフを描いてみると、需要に負のショックがあった際には価格は下 落し、供給に負のショックがあった際には価格は上昇することが見て取れる。だから経済全体が供給・需要グラフのように振る舞うのであれば、「需要側」の不 況はインフレの低下を伴うはずで、「供給側」の不況はインフレの上昇を伴うはずだ。”

このコラムでは、単純ではありますが、その故に普遍性の高いモデルとして、次のような図が提示されています。ADとは総需要(量)、ASとは総供給(量)のことです。

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本年4月を挟んで生じた大きな「経済ショック」は、その後、確実に物価レベルが上昇していることからして、サプライショック、上の図のASの線を左側にシフトさせるショック(右側の図)であったと言えるでしょう。

 

しかし、このショックの様相を、家計個人と企業、財とサービスで分けてみると、少し違った絵姿が浮かんできます。

 

まず、企業感取引について、財とサービスに分けて考えたいと思います。

企 業が生産活動を行うために購入する原材料や部品などの「生産財」の国内向け出荷は前期比▲6.4%低下でした。同様に、企業が事業活動を行うために外部か ら購入するサービスである「広義対事業所サービス」は前期比▲4.3%低下でした。つまり、企業間で取引される財・サービスは、今年の4-6月期にその前 の1-3月期と比較して共に低下していたことになります。

 

では、価格はどうなっているのでしょうか。

企業物価指数と企業向けサービス価格指数の動きを見てみると、7月速報で企業物価指数は前年同月比プラス4.3%、サービス価格指数プラス3.7%と、若干ながらサービスの上昇幅が小さいですが、共に価格が上昇しています。

先の簡素なモデルからすれば、企業間取引においては、サプライショックが生じており、そのために、生産財の供給や対事業所サービスが低迷しているという帰結になります。

 

他方、家計や個人の消費活動についても、見てみたいと思います。

「消 費財」の国内向け出荷は前期比▲7.8%低下とかなり大きな低下で、特に家電や自動車といった「耐久消費財」が大きく低下していました。同様に、「広義対 個人サービス」は前期比▲3.4%低下とこちらも大きめの低下であり、生活必需的要素の強い電力や飲食料品小売業などを含む「広義非選択的個人向けサービ ス」も前期比▲1.0%と多少落ちてはいますが、「広義し好的個人向けサービス」の方の落ち込みが前期比▲5.8%と、とても大きくなっていました。

 

では、個人や家計向けの財・サービスの価格はどうなっているのでしょうか。

7月の消費者物価指数の財・サービス分類を見てみると、全体をとりまとめた「総合」の前年同月比がプラス3.4%上昇という状況の下で、財分類はプラス5.6%上昇、サービス分類はプラス1.7%上昇と、財とサービスの間に顕著な差が出ています。

さ らにいうと、サービス分類の内、公共サービスがプラス3.0%上昇で、それと対比される一般サービスがプラス1.3%上昇(ただし、家賃がマイナスになっ ている影響が大きい)なので、一般サービスの相対価格が下がっていることになります。消費税率の上昇を考えると部分的には一般サービスの価格は下がってい ると言えるかも知れません。

 

ここからすると、対個人サービスの分野では、デマンドショック(先の図でいうと左側の図)が起きている(逆に消費財の分野ではサプライショック=コストアップショックが)起きていることになります。

この4-6月期の産業活動の低下は、鉱工業もさることながら、第3次産業において顕著であるという特徴があります。

 

と ころで、対事業所サービスに対する需要は、本質的に派生需要です。つまり、事業の提供する財・サービスへの需要があれば、対事業所サービスに対する需要も 増加します。ということは、逆に言えば、対事業所サービスそのものに対する需要を直接的に喚起するということは難しいというよりも、事の性質上あり得ない ということになります(客先からの注文がないのに、運送サービス自体を発注する事業所はあり得ないということです)。他方で、家計や個人が需要する対個人 サービスについては、家計や個人自体に「生計の維持」や「生活のエンジョイ」のためという、根源的なサービス需要がある訳です。

 

先に言ったように、4-6月期の経済産業には大きな「ショック」が生じ、特に第3次産業の活動レベルが低下しています。その内、対事業所向けのサービスにおいてはサプライショックが、対個人向けのサービスにおいてはデマンドショックが発生しています。

 

この対個人サービスを落ち込ませているショックの緩和、そして回復のためには、割引券や無料券のようなバウチャーを配布することが効果的かと思います。いわば、観光バウチャーとか、外食バウチャー、あるいはスポーツ観戦バウチャーのようなものです。

確かに、耐久消費財のように個人消費が冷え込んでいる部分もありますが、こちらではサプライショックが生じている可能性が高く、バウチャーのような消費補助をしてもさらに価格が上昇して需要を冷え込ませてしまう可能が高いです。

ま た、消費補助の対象として有体物を選択した場合には、結局需要の先食い現象を起こす(需要の異時点間移転)だけになって、「反動減」をまた発生させること になりますし、財の需要が一時的に増大しても、今年の1-3月期のように輸入が増大する面が大きく、国内への生産波及は減殺されてしまう面も否定できませ ん。

 

それよりも、物理的にはため込むことのできない経験、体験を提供してくれるサービスへの需要を喚起するようなもの、観 光バウチャー、スポーツバウチャー、外食バウチャーのようなものであれば、先々の反動減や輸入の急増(少なくとも直接効果としては)ということを心配する 必要がありません。さらに、こういったサービス消費は、経験財という側面が強く、経験の積み重ねと需要増の間に正の相関があると思われ、内容が良いもので あれば需要の飽和もありません。

つまり、1日24時間しか楽しめないという限界がありますが、その限界の中であれば、リピートが可能となりますが、そのリピートのためには最初の体験が必要なので、その最初の体験のためのハードルを下げると、需要が大きく増加する可能性があるということです。

 

こ ういった、スポーツ観戦や外食(比較的お値段の高いもの)、地域観光に対するバウチャー的なものをSNSの仕組みを通じて迅速に提供するという方法が一案 ですが、いずれにせよ、個人サービス市場において生じているデマンドショックを緩和、回復させることが重要ということが、統計と簡単モデル思考から出てく る結果です。

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