労働法制のあり方

2011/03/17

東北関東大震災において必要とされる復興事業のイメージ

超短期のライフライン関係及び今後の防災対策関係はのぞく

○日本全域から被災3県への広域物流確保策
 国道4号線が被災3県を縦貫しているが、広域輸送を陸上輸送に頼ると、この国道4号線が渋滞することになる。この国道4号線は被災地域内の域内物流の生命線であり、ここを広域物流が「ふさぐ」ことは効率性を著しく低下させる。
 そこで、港湾物流と航空物流を、閑散としている地方空港や地方港湾を活用して、再構築する。例えば、静岡空港は、東名高速道により関東圏関西圏に接続しており、ここを拠点に物資や人材を集積して、稼働している花巻空港に輸送する。この事業については、既存の航空会社というよりも、富士山静岡空港株式会社に対し、国が特例法により出資して、大規模増資をして、それこそJALをリストラされたパイロットや整備士を2年間程度の雇用契約で根こそぎ雇用することで賄うということが検討されえる(機材は、国際航空機のレンタル市場から調達する)。
 港湾については、国内海運の拠点を日本海側、例えば金沢に定め、そこから津軽海峡を経由して、八戸港等に輸送する海路物流網を構築する。この場合も、例えば港湾振興の法人などに出資して、運送事業を地方整備局等から委託する形とし、当該法人が国内海運会社と随意契約で再委託契約を結ぶという方式もあり得る。
 この広域輸送網を確保することで、負傷者や高齢者等を域外移送するための移送網としても活用できる(当然、受入側の病院や介護施設について、特例的な手当、つまり基準未達・各自治体の医療計画病床数の上限を超えることとなっても、医療保険、生活保護の医療給付の対象化、介護保険の対象事業所としての簡易認定等を併せて行う必要があるが)


○域内交通インフラの「分散型」での復活策
 ガソリンタンドという自動車運行インフラが崩壊しているものと思量されるところ、ガソリンスタンドという危険物保管施設を復活させるのではなく、電気自動車による分散型交通網を作り出すべし。
 具体的には、ガス改質装置及び太陽光パネル、風力発電機を大量に域外から沿岸部に集中的に輸送。これに合わせて、軽自動車をベースにする電気自動車を大量に輸送(例えば、ゼロスポーツ社の技術を活用)。
http://www.zerosports.co.jp/index.php


○「有給」ボランティア制度による雇用確保策
 日本全体では、有効求人倍率が低く、今回の震災による更に民間企業の求人は減少するものと思われる。そこで、この4月に就労出来ない状態にある30歳未満の者、あるいは、ニート、引きこもり者については、「有給」にて復興作業に従事する「ボランティア」を募る事業を行う。
 また、これらのボランティア作業に従事した者については、平成24年度以降の国立大学や専門職大学院(特に教員大学院や法科大学院)における入学試験における加点措置などを法制化すべし。
 さらに、ボランティア活動から、介護事業や建設事業等への恒常的事業体への転換への促進を行うため、例えば消費生活協同組合法やNPO法を改正して、コーポラティブ型(雇用者が経営参画することを義務づける法人法制)を策定し、かつ、このようなコーポラティブ型法人と会社法上の会社との間の組織変更制度を整備する(逆もあり)。
 コーポラティブ型法人の法制度を整備するのは、特に、一般法人法の設立手続きが過剰で登記費用や総会開催費用等の面で法人設立を不当に制約しているから。さらに、こういった法人に雇用されている者についての労働保険、健康保険の雇用者負担についての公的負担(時限措置)を検討。


○「感情労働」従事者を手厚く配置した復興住宅確保策
 阪神淡路の際にも問題になったが、復興住宅における身体的、心理的ケアが、高齢者と子供に必要になる。そこで、介護福祉士と保育士の育成を大幅に増員し、今年の後半に本格化するであろう、復興住宅群を整備する場合には、介護システム、保育システムを一体的に整備する。

→これらの措置に必要となる財源は、「復興債」として国債を増発するものとして、特例法でも、国会決議でもよいので、日銀引き受けを行うべき。週明けの日銀の資金供給オペレーションは、久々のヒットであったが、ここでも明らかになったのは、日本の金融システム全体、日本の銀行の機能不全(銀行は、日銀の資金供給を受け入れきることできず、応札が日銀の資金供給目標を下回っている)を表象しており、伝統的な金融政策が機能していないことが明らかになっている。
 よって、マクロ経済政策的観点からも、遊休人材と資源を活用するべく、人為による資金配分が不可欠であり、日銀引き受けによる「復興債」を大量発行するべきである。
 また、付随的効果として、この復興債の大量発行により、円レートが円安になることが予想されるが、これをもって日本の為替安誘導であると国際的に非難されるおそれは想定できないし、仮にそうであっても必要なものは必要なのであり、昨年11月のような懸念なく円安誘導に進めることとなる(これは、原油等の資源価格の動向にもよるが、短期的には日本企業への一服の時間を与えることになる)。

○自立復興に向けた金融確保策
 郵貯マネーを活用した、
 ①住宅再構築、事業再建に向けた者への直接の金融確保(商工中金、政策投資銀行等)
 ②地域金融機関の破綻懸念払拭策及び貸し出し拡張策(不良債権の買い取りと信用保証)
 ③ノンバンクの利用拡大策として、マイクロファイナンス方式に対する貸金業法、出資法の限定解除
 これらの事業、特に①については、国または該当機関自らが財投機関債を発行することでも可能(これを日銀が引き受ける)。他方、②や③の方策を金融機関の株式その他の持分を取得する方式で行う場合には、株式会社たる郵貯銀行が持ち株会社化する方式の方が有効であるものと思われる。

<復興に向けた基本哲学>
 誤解を招く表現であることを認識しつつも、

「前世紀の遺物を引きずったハード、ソフトを復興させるのではなく、21世紀型の協調ネットワーク型社会を復興するためのハード、ソフト両面の整備を目指し、日本社会の今後の「目指すべき姿」が仙台に、石巻に、南相馬に現れ、世界中の人々が移住したいと思うような新しい生活空間を作り出す」

ということを基本哲学、スローガンとすべき。

2010/01/14

出資バウチャーという方法論

 現代の会社法や一般法人法などの団体/法人法制制度の下でも、マイクロビジネスのビークルを作り出すことは十分可能。
株式会社であっても、株式を全部譲渡制限付とし、買取請求について定款で制限すると共に、会社の運営についての少数株主の議決権能を強化した上で、業務運営に参加する「社員」に株式を持たせる=出資させることで、従業員一体方の経営体を作ることはできる。
 持株会社(特に、合資会社や合同会社)であれば、さらに定款をもってより柔軟な仕組みをつくることもできよう(機関設計の自由度が大きいから)。
 また、共同組合法制を活用して、当事者主権的な仕組み、例えば、介護保険の利用者と介護福祉士が出資して組合を作り、小規模な介護サービスを提供するといった仕組みだ。 
 このようなマイクロビジネスへの「出資」をエンパワーするためのバウチャーみたいなものを公的に設計できないだろうか。例えば、出資バウチャーを一定の年齢に達すると(潜在的介護サービスの利用者となると)自治体から給付されるとか、介護福祉士の資格を取得するとこのバウチャーの配分を受けるというのはどうだろう。
 
 被雇用者中心的、当事者主権的な社会サービスの提供の在り方を公的に支えるために、公的サービスの供給主体への出資を、税金でエンパワーする具体的な方法論はあるのではなかろうか。
 あるいは景気対策として流行りの就業訓練についても、訓練を受けた仲間が集って、自らサービス提供のビークルを作り出すという発想も、その訓練プロセスの出口戦術として必要ではなかろうか。

 このような出資バウチャー的な仕組みの構築・支援のために必要な法整備の検討課題としては、株式・持分の譲渡制限の報償としての買取請求に関し、持分などを換金するというよりも、別のサービス提供機関の持分・株式への移行に限定することを可能にするというか、義務化するということあるのではなかろうか。
 こういった定款上の取り決めを、介護保険の指定事業のための要件とするか、法人設立に関する実定法上の強行規定とするかは考えどころ(特別の法人根拠法ということになる)。また、この制限に対するサンクションを、公的規律とするか、民事的にも無効(となると持分移転自体が無効となり、動的安全は否定される)も思案のしどころだ。

2009/09/10

若年層の第2就職氷河期を造らないために

 今回の民主党、社民党、国民新党の連立政権合意の政策項目の中でも、

6 雇用対策の強化-労働者派遣法の抜本改正-

 ▽「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止のみならず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とする。
  製造業派遣も原則的に禁止する。違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」の創設、マージン率の
  情報公開など、「派遣業法」から「派遣労働者保護法」にあらためる

 ▽職業訓練期間中に手当を支給する「求職者支援制度」を創設する

 ▽雇用保険のすべての労働者への適用、最低賃金の引き上げを進める

 ▽男・女、正規・非正規間の均等待遇の実現を図る

という形で、個別雇用法制や労働市場制度への関心が唱われている。

 しかし、これらの「改善」で来年以降の若年層が直面するかもしれない「就職氷河期」を未然防止することができるだろうか。派遣労働問題の解消の本質は、派遣労働という就労形態に「追い込まれる」労働者及びその予備軍の存在をいかに「適正化」するかということだと思う。
 そして、この問題は、近時の問題としては、若年者の「正規」雇用の激減という形で現れている。
 いつの時代にも、中高年者の不安定雇用者層は存在しており、それ自体は現在特に顕在化した問題ではない。若年者問題は、現在の若年者は必ず中高年層になり、十数年後に、より深刻な中高年不安定雇用問題に帰結するものであり、早期の解決が求められている。

 この若年者雇用を引き起こす重要な要因の一つに、一括採用という雇用慣行の構造上の問題があるというのは、既にそれなりに、普及した見解であろうと思う。
この新卒一括採用が、「構造的な雇用慣行上のミスマッチ」を生み出すというのは、既往の経済成長(企業成長が前提となる)社会と労働法制による協同構築物であるこの雇用慣行が、新しい経済社会構造と不整合になっている表象・証左なのである。
 これを「解消」しようと思えば、社会と整合的な労働法制を再構築する必要があるということだ。

 例えば、新卒一括採用は、少なくとも大手企業や中堅企業間と労働者との間のナッシュ均衡となっていると解釈できる。つまり、通年採用をすれば、より良い労働者を雇用できると思えば、企業側はコストをかけてでも通年採用をするが、一括採用時期を外すと、いい労働者が市場に残っていないと「予想」すれば、必死になって一括採用時に良い労働力(と思われる)者を囲い込もうとする。
 一方、労働者側も、通年採用でじっくり探せばフィットする企業をサーチできると思えば、じっくり探すが、一括採用時期に漏れれば良い仕事が無くなると思えば、必死にとにかく飛びつこうとする。
 まさに、典型的なナッシュ均衡であり、この均衡を破るためには、双方の「不信」を「通年採用でもよい成果が得られる」という「期待」に変えなければならない。

 この問題を解消し、派遣のような不安定労働を解消するために、派遣法制を改革したり、就労支援を行うことは無意味とはならないが、迂遠であることは否定できない。それよりも、社会環境と不整合となっている労働法制を変化させ、企業群と労働者群が全体として行動を変化させるように制度を整えなければならない。
 ナッシュ均衡状態では、双方のプレイヤーの「抜け駆け」への不信から、パレート改善が図られないのであるから、「抜け駆け」を防止する法的制度転換でなければ効果が出ない。

 では、具体的にどのよう変えるのか。
 基本的には、企業側が抱え込んだ人材を「はき出す」ことが許される仕組みとして、一方で、労働側も自己の希望に添う就職口を探索することに不利益がない仕組みとすることだろうと思う。この点、「雇用の流動化」論のように、一足飛びに、雇用全般に適合されるルールとするのではなくて、就労間もない時期における「再交渉」「再探索」のハードルをもっと下げるということが適当だろう。そこで、

・目下の労働法制下で、扱いが不徹底な「試用期間」を制度化する(例えば1年間)。この場合、解雇権濫用法理及び労働契約法による解雇制限を、試用期間については緩和させる必要あり(相当の金銭補填つき)

・就業規則の企業側の自由の制限。特に、職務専念義務の名の下に副業制限や就職活動制限を広汎に判例も認めているが、少なくとも試用期間については、この副業制限や就職活動制限を就業規則に定めることを強行法規として禁止する

・試用期間における最低賃金法の適用排除(その代わり、所得税法上の所得控除を認める)

・企業側による試用期間の濫用防止措置として、同一人との複数回の「試用」の禁止は当然として、「試用」を行うことに課税上の負担をかける(例えば、法人事業税の報酬割の外形標準課税の算定において、「試用」者の報酬を割り増し計算するなど)

  もちろんこれら以外にも、雇用調整助成金などを用いて、通年採用企業等に助成を与えるという仕組みはありえる。また、障害者雇用促進法における法定雇用率のように、通年採用による労働者採用を直接的に義務づけるという方策もあるかもしれない。ただ、このよな直接的な誘導・義務づけ方策は、法適用の潜脱を生み出すだけのようにも思える。
 何よりも、一括採用で囲い込まなくても良い労働者を採用できる、一括採用でねじ込まなくても良い職にたどり着けるという労使双方の「確信」を醸成することが肝なので、法制度を「適正化」して「抜け駆けなし」とすることが重要なのだから、そのようなメカニズムデザインを志向するべきであろう。
 こういう視野の中で、「派遣法制」についても、付け足し的に措置されている採用義務づけ規定ではなく、派遣によるマッチング機能と試用の関係を、もっと本格的に制度上位置づけるべき。
 派遣制度は、労務コストの引き下げを企業側の労務管理スキルの向上ではなく、コストの外部化(見えない化、組織外への押しつけ)と人材処遇の改悪で対処するための制度的構築物となっている。経済同友会などが偉そうに「今後の人材像」などとうそぶいていても、こういう制度の存続させようとする財界の姿勢は、所詮は、その無能を表しているに過ぎない(ホワイトカラー・エグゼンプション=残業ゼロ制度も、労働時間管理能力が使用者側にないことの証左である)。
 要すれば、人材の人間的な処遇と、コストの合理化を達成する労務管理能力が日本には育っていないということ。

 確かに、通年採用というのは、企業における人材リソースの調達のコスト・手間を一見引き上げることになるように見えるかもしれない。しかし、そのコストを、働く者への処遇悪化という形で吸収するという社会は、本当に自律的な市民による近代社会といえるだろうか。
 「通年採用」とは、要すれば 企業という部分社会に関し、「入りやすくて出やすい」形態に変えるということである。日本の社会を構成している「堅い」部分社会という仕組みを、柔らかい部分社会の緩やかな結合組織とし、自律的個人が常に複数の「柔らかい」部分社会に複層的に帰属するという社会になればよいと思う。

2009/03/06

非正規雇用問題について、社会的コストから考えてみた

 あいかわらず、非正規雇用問題というか、働き方を巡る制度問題について考えているが、別のアプローチ方法として、こういった問題を個別労使関係上の労働条件問題と考えるのではなく、派遣労働という「いびつ」な就労形態において、雇用側が社会的なコストを「避ける」「逃げる」ことが可能となる結果、「不当な」労働が実態として存在してしまっているという社会現象と捉えてはどうかと、考えてみた。
 こうすると、非正規労働を使うことによって、
 ・社会保障コスト(生活価値 :憲法25条)
 ・労務調整コスト(人格的価値:憲法28条)
から逃避することが許されているという仕組みの是正方策を検討すべきだという、とりあえずの命題が出てくる。

 というのも、解雇権濫用法理とか、同一労働同一賃金など、個々の労働条件を強行規定的に制限しようという議論について、何というか「時期尚早」感があるし、立法論を展開できる程の議論の熟度がないという意味での未熟感も強い。また、圧倒的な景気後退局面において、「平時」としての適切な労働条件の在り方について実証的な議論ができる訳もなく、議論がイデオロギー対立化するだけで、当面、建設的な議論とならない気がするから。

 だから、「社会保障コスト」と「労務調整コスト」をきちんと雇用側に負担させるための方策について考えてみた。


1.「入りやすく」かつ「卒業させる」雇用保険・生活保護

 まず、社会保障コスト負担方策の前提として、まともな非労働者への給付制度を作らないといけない。そのために、

・生活保護について、「補充性の原則」を、就業活動への従事を条件として、緩和(雇用保険にこれまで非加入であった者、個人事業者)
 ・雇用保険への加入(権利/義務)を広く『非正規』にまで拡大
(1ヶ月以上の雇用契約、請負契約の場合には強制、それ以下の被雇用者、個人事業主は白手帳のように当面任意で仕方がないか)
・就労カウンセリングの高度化と義務化
(社会福祉士、社会保険労務士等の援助者体系を見直し、かつ、その専門性を高めて人材を育成)

といったことがまず必要だろう。
 さらに、「自立促進」という観点から、所得の上限は定めつつも、働きながら(あるいは、職業訓練及び求職活動を行いながら)失業給付や生活保護(生業扶助)の給付を得られる仕組み(運用の改善?)も検討すべき。まじめに働くと損だから、こうしないと、給付依存から脱却する方向でのインセンティブが生まれない。確かに、給付は増えるかもしれないが、就労後は納税者になるのだから、良い「人的投資」ではないのか?
 また、長期的な理念型としては、生活保護と雇用保険(失業給付)の支給及びサービス給付並びに援助者たるソーシャルワーク業務の「統合化」しないといけない。就労支援を、何というか転職コンサルの延長線で考えてはならない。就労できない、非労働力化してしまう要因は多様なのだから、就労支援は生活設計自体の再設計から必要になるのだから。

こういった給付・訓練の整備を前提として、まずは、派遣事業者による社会保険逃れを制約するため、

・雇用保険、厚生年金保険、健康保険に加入しない派遣事業者に対しては、厳しく派遣事業の許可取消を措置すべき

ということか(既に与党で検討開始らしい)。

 さらに長期的には、派遣先企業に対しても責任を問うことも適当だろう。例えば、派遣事業の許可を取り消された事業者との契約によって派遣されていた労働者との間で、その契約残余期間中につき、有期雇用契約を義務づける。当然社会保険料の負担も発生するといった方策で。
 また、本来社会保険逃れの摘発は労働基準監督署の責任なのだが、これが機能していないのは衆知の事実。といって、この組織を肥大化させるのもナンセンス。
 そこで、個々の労働者及び労働組合に、雇用主(一般企業、派遣元・派遣先事業者及びその経営者)に対し社会保険非加入に関する訴えを提起する権利を与え、民事執行手続(仮執行・強制執行)によって、未払いの社会保険料を徴収させ、国に代行納付できる制度も検討した方が良い。いわば、信託法上の受益権者の権利の類推、あるいは、国に対する社会保険権利者としての債権者代位権の類推という発想での、労働基準監督署の機能不全の代替ということ。

とにかく、派遣労働(非正規労働)という形態が、社会保険制度からの排除を意味したり、実務上本来負担すべき(社会的共助の)コストを雇用主が潜脱するための方便なるような事態を改善しなければならない。


2.非正規労働者のための労働組合制度

まず、団体交渉の実質化のために、

・派遣法上、労働組合の団体交渉義務者たる「使用者」(労働組合法第7条)に、直接の雇用者たる派遣元企業だけではなくて、重畳的に、派遣先企業を含める。
 (労基法、労安法、男女均等法などで定めるルールの遵守義務は、派遣法上明文で規定している)

 最高裁の判例では、実質的条件(「その労働者の基本的な労働条件について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合」)を備えていれば、派遣先企業も(派遣元企業横断の労働組合による)団体交渉の相手方となり得ることとなっている。これは解釈論であって、安定性がない(かつ、論者によっては、この要件は厳しすぎるとの評価もある)。
 そこで、派遣法において、労働組合法第7条の「使用者」に派遣先企業が含まれる旨、派遣法上に規定してしまうということ。

※労働組合法

(不当労働行為)
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

 派遣先企業の団体交渉拒否などが不当労働行為となれば、労働委員会の救済対象(仮処分、差止)になるし、労働組合法第7条には私法効果も認められ、一般不法行為が成立するとも解されるので、団体交渉を拒否された労働組合、労働者には、損害賠償請求権も認められる場合がある。
 もちろん、さらに将来的には、労働契約承継法のみならず、親会社などの現場を実質的に支配している会社に対する、団体交渉権についても考えることが必要かもしれない。

 個別の労働条件について、具体的な強行規定を定めることは、派遣労働者など、労使交渉の場面で不当に不利な扱いを受けてきた労働者を、団体交渉という形でエンパワーし、その結果構築される結果を吟味してからの方が良いのではないか(憲法27条よりも、28条を重視する視点)。
 この団体交渉の意義をより高めるため、団体交渉の「成果」が広く非正規労働者の個別労使関係にも均雫させる方策として、例えば、消費者契約法第10条のような一般条項を設ける形で司法救済を図る方策、労働組合法第18条のような地域労使協定を「派遣労働」等について横断的に設定する方策についても検討されるかもしれない。
 労使協定を企業横断的に整備する仕組みにより、労働条件の切り下げ競争を防いでいる、米国的な業種別ユニオンの発想に事実上近くなるのではないか(競争法上の手当も検討必要か?)。
こういう方策が必要となるのは、既存の企業別労働組合が、就労形態の多様化によって、「排除のメカニズム」となってしまっているから。だから、横断的労使交渉という形で、新しい問題意識からの、組合中心的労働法制への回帰を、労務調整コストの適正負担を雇用側に求めるためには、検討する必要があるのだろう。

 とにかく、労使交渉を通じて労働条件に関する合意を形成するためのコストは、憲法上当然に甘受すべきものであり、派遣や請負という労働形態が、この労使交渉のコストを潜脱するための方便となってはならない。

2009/02/23

またまたタイミングのづれた法律の見直し論議

派遣切り賠償 法明記へ 「責任」さらに強化 政府・与党方針

拡大する派遣労働者の契約の中途解除に歯止めをかけるため、政府・与党は、派遣先企業が事前の予告なしに中途解除した場合、派遣元や労働者に対し、損害賠償を支払うことを労働者派遣法に明記する方向で検討に入った。損害賠償に関しては、厚生労働省が定めた派遣先が講ずる指針に盛り込まれているが、順守されないケースが増えているとみられ、法律に格上げし、派遣先の一方的な契約解除に歯止めをかける。


 以前のエントリー「タイミングのずれた派遣法制見直し」での嘆息と同じため息が出てくる。
 結局、緊急時に講じるべき措置と平時における「あるべき姿」との混濁がある。

企業間の労働者派遣契約は、単なる企業間の取引契約であり、派遣法上も実体法上の特別な規律、つまり契約の内容を「拘束」する任意規定や強行規定は存在しない(派遣先企業が派遣労働者を労働基準法や労働安全衛生法に抵触するような労働者の扱いをした場合の解除権の設定等があるだけ)、いわば民法典がそのまま適用される契約であった。
 だから、契約の一方的解除に伴って、損害賠償が他方当事者に発生するのは当たり前であったはず。この点、上記の記事の中で、「法律に格上げされれば、派遣雇用に対する派遣先の責任は重くなり、「派遣切り」抑制につながる期待は大きい。」としているが、損害賠償の権利義務関係自体は、既に法的効力を有している。

 目下の情勢において、派遣労働契約を契約期間満了前に解除しても、派遣元企業に何の賠償もされないのは、
 ・そもそも、労働者派遣契約において、損害賠償が派遣元企業によって放棄されている
 ・契約上損害賠償の責任が規定されている、あるいは少なくともその権利が放棄されていないが、派遣元企業が取引関係を円満に維持する観点から、賠償請求をしない(あるいは個別に放棄する)
から。

 まあ、「損害賠償を支払うことを労働者派遣法に明記する」というのは、損害賠償の放棄を禁じるという趣旨の強行規定を作るということなのだろう。例えば、消費者契約法では、

 

第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
 一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項

として、債務不履行(契約の中途解除も債務不履行である)に起因する賠償責任免除=放棄の条項を無効としている(逆に、消費者の損害賠償責任を免除する条項は有効)。

 しかし、損害賠償は派遣元企業が派遣先企業に請求しなければ、そもそも、この国では実現しない。派遣事業者が派遣先企業と取引関係を重視すれば、実際には行使されることはないであろう。裁判費用もかかるし。
 さらに、立証(要件事実)上の問題として、派遣契約を中途解除した場合に積極的に立証しなkればならない「損害」とは何なのかが不明。例えば、派遣事業者にその契約で派遣する労働者の雇用義務が残置し、そのための給与等が派遣事業者の「損害」となるのだろうか。しかし、実際には、派遣事業者は、労働者を解雇しているのだから、この意味ので「損害」は発生していない。
 また、一般的には、債務不履行による損害賠償は履行利益の補償だから、その履行利益分、いわば労働者のピンハネ分が損害として認定されることになるというのだろうか。
 
 より深刻な問題は、このような強行規定を作ると、中途解約の損害賠償のリスクから、労働者派遣契約がさらに細分化されだろうということだ。そうすれば、仮に立証上の負担を派遣事業者がクリアしても、損害自体の絶対額を小さくすることができるから。

 よって、労働者派遣契約という企業間契約の中途解除に関する損害賠償を強行規定化しても、ほとんと意味がないだろう、つまり平時の法律としても殆ど意味がない。

緊急対策としても、ほとんど意味がなかろう。特に、強行規定化をどのタイミングで行うかによると言え、現在成立している派遣契約には、適用されないだろう。とすれば、まさに現在中途で失職してしまった人々、近々に失職する人には、適用されないということだ。それでは、この法律改正は、誰を救おうというのだろうか。

 全くタイミングを外したおかしな議論だ。


追記

  大竹教授のブログでは、上の記事とはちがう文脈ではあるが、次のように論じられている。


有期労働契約研究会~大竹文雄のブログ~より

 もし、これが有期雇用の雇い止め規制を強化するものであれば、次に日本の景気が回復しても雇用の回復はずいぶん遅くなってしまうだろう。日本で非正規雇用が増えてきた理由についての基本的理解が間違っているのではないか。正規雇用の雇用保障が厳しいからこそ、有期雇用契約が増えてきたのだ。有期雇用契約の雇い止めが厳しくなれば、その上限の前で雇用契約が終了することが増えてくるだけだろう。結局、有期雇用には非常に短期間の雇用しかなくなってしまい、結果的に不安定雇用が増えるだけになるはずだ。

  全く指摘の通りである。どうも、この有期雇用契約に対する本質的「白眼視」が、法制度の議論を不適切な方向に推し進めているように思えてならない。
 僕自身は、雇い主を主体的に選択できるような複数勤務の有期雇用といいうのが、一つの理念型だと思っているので、雇い止め云々という形で、強制的に安定雇用を捻出しようという発想にはついて行けない。
 「安定」雇用を作り出すのは、労働需要の喚起であり、産業政策誘導とマクロ経済政策の役目だと思う。

2009/02/05

単一の雇用主に頼らない労働者になりたい

東芝:工場正社員の「副業」容認へ 富士通子会社すでに(毎日新聞 2009年2月5日) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?b=20090205-00000011-mai-bus_all

 東芝は、半導体や中小型液晶パネルの工場で働く正社員1万6700人を対象に、一時帰休を実施する2~3月の期間中、アルバイトなどの副業を解禁する検討に入った。減産に伴う勤務時間短縮で減額した賃金を穴埋めできるようにする。富士通の半導体子会社、富士通マイクロエレクトロニクス(FME)も国内3工場の正社員計約5000人の副業を解禁しており、賃下げが長期化すれば副業容認の動きが広がる可能性もある。
 東芝の副業解禁の対象は、半導体工場の約1万3700人と液晶工場の約3000人。就業規則は副業を禁じているが、通常業務に支障を来さない範囲で認めることにした。FMEは勤務時間短縮で賃金を大幅減額する3月末まで認める。
 一方、三菱自動車の水島製作所(岡山県倉敷市)も正社員約3000人の副業を独自に解禁し、1月から40人がアルバイトを始めた。ただ三菱自本社は「事後的に知った。就業規則に反しており、40人以外の新たな副業は認められない」としている。


 今朝の報道を見ると,企業が「副業」を社員に勧奨し始めているそうだ。ただし、あくまで臨時的 特例的なものとして。
 企業、雇用主は、副業を「一般的には」就業規則で禁止したり、雇用主(管理側)による個別承認制にしていることが多い。さらに、この規則に反した場合には、懲戒解雇の対象とされることも多いらしい。

 労働法の世界では、この副業禁止ルールは、「兼職・兼業の規制」と称され、菅野「労働法 第8版」398頁以下では、

 裁判例は、このような兼職(二重就職)許可制の違反については、会社職場秩序に影響せず、かつ会社に対する労務の提供に格別の支障を生じせしめない程度・態様の二重就職は禁止に違反とはいえないとするとともに、そのような影響・支障のあるものは禁止に違反し、懲戒処分の対象となると解している。

二重就職も基本的には使用者の労働契約上の権限の及びえない労働者の私生活における行為であるので、その許可制の規定を上記のように限定解釈することは正当である。

 このように兼職規制というのは、労働法学的には、その効力が「限定的に」解釈されるようであるが、「会社秩序への影響」「労務の提供に格別の支障」といった不都合は、探せば見つかるわけで、こういった要件では、極端に人格を制限するようなものでなければ、結局、兼職・兼業規制を就業規則上で定めることは合法になってしまう。これでは、管理側の都合による,囲い込みでしかない。
 特に、「労務の提供に格別の支障」という要件で、労働者の健康への配慮もしているように見受けられるが、これった規制によるマッチポンプではないか。アナロジーでいえば、人を閉じ込めることは許容しておきながら、その閉じ込められた先の空間の快適さを規制しているように見える。こういう「囲い込み」の有り様が、フーコー流の生政治の有り様だと言ってしまえば、それまでだが、だからと言って、それを見直すことが原理的に不可能ということもでもない。

 以前のエントリでは、こんな風に書いておいた。

・恒久対策として、働き方の多様性を如何にして確保するか。
→正規雇用者の残業率はつい最近まで恒常的に高止まり。そのためワークライフバランス論浮上。同時に、長期労働の緩和という視点も込めて、ワークシェアの議論も浮上。
→日本の硬直的、組織間没的な正規雇用者の労働条件は、結果的に辺縁労働力との二極分化を招き、失職者、ワーキングプアと、これらの存在によって脅される長時間労働者とを生み出している
→その本質的な要因は、経営側の裁量を広く認める人事権(就業規則及び処遇処分)と解雇権濫用法理による正規労働者の囲い込みにあり、この2つの制度はコインの裏表
→解消方策としては、
     ①就業規則の拘束性の緩和、特に兼職制限の原則的禁止
      (労働者にとって不利なものだけを無効とする片面的強行規定化)、
     ②パートタイム労働者に対する社会保障参加イコールフィッティングの提供、
     ③生活支援サービス等他の企業での労働参加についての分離課税と累進強化、
     ④年金制度、退職所得課税における長期雇用優遇の見直し、
     ⑤残業割増率著増、法人課税における外形標準課税の強化など労働者を
      長時間働かせることに対するディスインセンティブの付与
→大事なことは、複線的な職業人生を日本人が過ごせるようにすること


 さっきの兼職・兼業規制に関する裁判例による「限定解釈」についても、こういう定型的な解釈は本当に労働者側の私生活上の「兼職権」確保に寄与しているのだろうか。勿論、この点は、合法性を基礎づける事実、つまり「会社秩序への悪影響がある」兼職であること、「労務の提供に格別の支障を及ぼす」兼業であることの立証配分がどちらにあるかによって大きく異なる。
 とすれば、要件自体は変更しないとしても、単なる限定解釈ではなくて、実定法で、兼職・兼業規制については、原則違法性の推定をし、その規制の必要性(「会社秩序への影響」その職場における労働の特殊性など)と処分の合理性(「労務提供への支障」=その兼職が具体的に弊害を生んだこと)の立証責任について、規則の制定者・処分者=雇用主に負わせるということが必要だと思う。

 この兼職ルールの問題について、昨今話題のワークシェアの議論に、矮小化してはいけないと思う。また、ここ最近の企業の対応のように、臨時特例的な措置ではなく、今後の日本における労働のあり方として考えるべきだと思う。
 そもそも、兼業、副業を持って、一つの雇用主だけに依存しない生活基盤が常にあれば,長時間労働や過労死などという人格的破壊を招き、貴重な労働資源を摩耗に参加しないというパスが、個々の労働者に開ける。また、労働者からして、転職探索のチャンスを実質的確保することも進むだろう(この点、就業中の転職探索中の失業給付につき、部分給付を認めるような制度改正が必要とは思うが・・・)。また,幼児保育、学童養育や障害者介護、高齢者介護などの生活支援サービスに、有償無償のパートタイムという形で、参加できるようになることが期待されたりもする。

 修行規則で、兼職禁止などのルールを定め、そのルール違反による不利益処分をさせないような法的整備は、今日の「労働クライシス」の直接的処方箋にはならない。けれども、今回の事態をきっかけとして、法整備を進めて、臨時的ではなくて、不可逆的に、日本人が複線的な職業人生を生きることができるような仕組みに変えたいよな。職業人生を、一つの組織、同じ時間帯,同じように働くという不気味さを感じようよ。

2009/01/14

目下の労働問題を検討する視点

1.避けるべき検討過程における「陥穽」「地雷」

・恒久的制度改正と緊急時対策を峻別する
→ルール・特別措置を廃止するコミットメントの獲得方法

・マクロ経済政策と雇用政策(法制度改善)との峻別
→ネイティブで大量雇用を作り出すのは、マクロ経済政策であり、雇用制度改善ではない。
 ただし、雇用制度が景気変動の振幅に与える影響については慎重な配慮必要。

・ルール変更には、パレート改善、ヒックス=カルドア改善、所得の一方的移転となるものがあり、この点を峻別。


2.雇用政策検討が当面目指す目標

・緊急対策として、失業が大量に発生することを、如何にして防ぐか。
→緊急対策であるので、「悪影響」が恒久化しないような時限的・徳政令的であって、政治的反発の少ない選択肢を提案しなければならない
→特に、この仕組みは、所詮「所得の一方的移転」となる蓋然性が高いので、政治的正当性の獲得のための倫理的ロジックの精査が必須

・恒久的対策として、労働分配率の向上を如何にして実現するか。
→労働分配率の趨勢的低下は、人身の荒廃を招く。この点を経済のグローバル化を免罪符にして思考停止に陥ってはならない。
→労働分配率を上げるためには、①資本・経営者ストックの供給を増やし、労働の相対価格を上げる、②労働集約的で海外との競争の相対的に少ない産業を促進する(おそらく、それは、幼児保育、学童保育、高齢者介護、障害者支援、医療などの生活支援サービス分野)
→さらに、セーフティネットを再構築して、労働の留保価格を引き上げること


・恒久対策として、人口減少国家における人的投資を如何にして涵養蓄積するか。
→情報技術の進展により組織マネージの効率性が上がっているので、いわゆる組織特殊的人的投資は価値が無くなりつつある以上、自然体で、経営者の人的投資インセンティブが高まることはあり得ない
→そもそも、人的投資が必要な分野とはどこなのか。ちなみに、ケアワークは非常に個別性の高い人間相手の労務であるので、高度な情報処理スキルによって、顧客満足を大きく向上させることができることから、人的投資が有望な分野
→これらの分野の経営者に対し、人的投資インセンティブを強く与える仕組みとして、従業者と経営者の人格的一体性の確保、資本拠出者から経営者への圧力を緩和する組織法制などが必要
→また、人的投資を優先する産業分野における起業=雇用の増加のためには、当該産業に対する潜在需要を顕在化させることが必要であり、生活支援サービスへの公的資源投入を大幅に増加させること

・恒久対策として、働き方の多様性を如何にして確保するか。
→正規雇用者の残業率はつい最近まで恒常的に高止まり。そのためワークライフバランス論浮上。同時に、長期労働の緩和という視点も込めて、ワークシェアの議論も浮上。
→日本の硬直的、組織間没的な正規雇用者の労働条件は、結果的に辺縁労働力との二極分化を招き、失職者、ワーキングプアと、これらの存在によって脅される長時間労働者とを生み出している
→その本質的な要因は、経営側の裁量を広く認める人事権(就業規則及び処遇処分)と解雇権濫用法理による正規労働者の囲い込みにあり、この2つの制度はコインの裏表
→解消方策としては、①就業規則の拘束性の緩和、特に兼職制限の原則的禁止(労働者にとって不利なものだけを無効とする片面的強行規定化)、②パートタイム労働者に対する社会保障参加イコールフィッティングの提供、③生活支援サービス等他の企業での労働参加についての分離課税と累進強化、④年金制度、退職所得課税における長期雇用優遇の見直し、⑤残業割増率著増、法人課税における外形標準課税の強化など労働者を長時間働かせることに対するディスインセンティブの付与
→大事なことは、複線的な職業人生を日本人が過ごせるようにすること


3.目標にしてはいけないこと
 雇用安定を最優先として、雇用を安定化させること、つまり、解雇のコストを「一律に」高くするような、制度ルール変更は、現状において「正規雇用」になっている強者を、さらに強く保護し、現在保護の網からあぶれた弱者、これから労働市場に参入する弱者を、より弱い立場に追い込み、労労対立を煽るだけになる。


4.個別的に留意すべき事項

①派遣法制
 派遣法制については、そもそも一般労働者派遣事業という事業類型がなぜ必要なのかという点についての精査が必要。期間の定めのある直接雇用と何が違うのか。結局、「期間の定めのある直接雇用」に経営者にとって不合理な面があるので、その逸脱として使われているのではないか?
 直接の有期雇用ルールが変われば、不自然な3面契約となる一般労働者派遣事業は不要になるのではないか。
 本来、他社雇用は、就労調整のために必要な情報マッチングのために必要としか思えず、その場合には、上記の意味での有期直接雇用の柔軟化と職業紹介の効率化が本丸であり、いわゆる登録型と称される一般労働者派遣は、いたずらに間接コストを発生させているだけではないのか。

②制度のきめ細かさ
 制度の再構築を検討する場合に、類型化と一般ルールの組み合わせによって、穴はなくとも肌理の細かいルール制度を設計する手間を惜しんではならない。
 社会保障への参加ルールについては、制度が歴史的に縦割りに作られている(歴史的経緯による過度の類型化の)ため、類型間の狭間に落ちる者が生じがちであり、そのような「狭間」を訴訟によって埋めるということの繰り返しとなっている。

 一方、給付ルール(生活保護を含む)については、当該制度類型内において、制度の形骸化により過度の一般化の悪弊に陥っており、本当に必要なニーズへのマッチがなされていない。ミーンズテストは、一部論者が主張するのとは逆で、もっとコストをかけて丁寧に行うべきなのである。
 職業訓練とリンクした失業給付についても、その支給条件をもっと緩和し、かつ、職業訓練状況のモニタリング/カウンセリングをもっと丁寧に行うべきなのである。ここ数日の報道では、くだんの派遣村の村民に対し、「ハローワークに行けば、求職はあるのに、仕事のえり好みをして、就職しない」等の批判が寄せられるケースも出てきている。しかし、職業選択というのは、非常に慎重な検討が必要であるし、能力の涵養には時間とコストが必要なのである。この点、非常に機械的な裁定では問題が多い。

 労働ルールについては、労働基準法、最低賃金法等の雇用に関する規制(一部は強行規定)と団体協約(や就業規則)によって構成されているため、労使関係の個別化による厚生改善がなされない状況となっている。労働条件規制について、情報コストの観点から、常に個別事情を全て斟酌して、その合理性を判断することが難しいものの、きめ細かい類型化によって、この一刀両断的な一般ルール(集団ルール)の適用される範囲を縮小するような制度設計上の手間を惜しんではならない。
 例えば、ホワイトカラーエクゼンプションなども、適用対象を単に年収で二分でするという乱暴な類型化ではなくて、もっと職能について細かく考える、あるいは、残業手当についても段階化する等のきめ細かい設計をすべきであったと思われる。それが、ひいていは職能描写(ジョブ・スクリプション)を進め、組織内での人格的支配のような経済厚生を引き下げる「悪弊」の防除になったのではないか。

 なお、上記のうち、労働条件を定める制度ルールと社会保障参加ルールについては、制度であらかじめ肌理細かく類型化することで行われるべき問題である。
 一方、給付や職業訓練の問題は、より多様性、個別性の高い現場裁量、現場のエンパワーメントの必要な仕組みによって、きめ細かさが達成されるべき問題であるので、いかにきめ細かい対応をし、真のニーズにマッチした給付をしたかを、事後的に補足する(政策評価)ことで、当該事業に従事する者の業務上の評価を行うことが必要となる。


③雇用制度のビルトイン・スタビライザー機能
 それが日本の典型であったという「通念」が幻想であったとしても、解雇権濫用法理によって保持された長期雇用は「辞めさせにくく、雇いにくい」という性質を持っているので、景気変動のビルトイン・スタビライサーとして機能していた。
 逆に、景気後退局面では、派遣労働、そして有期労働という、景気安定化機能のない雇用形態において、問題が集約的に現れるのは当然といえば当然である。ただ、これらの形態のウェイトが低い場合には問題が大きくならないが、ウェイトが大きくなると、景気後退を助長する要因となることは論をまたない。
 そこで、雇用制度の改変を検討する場合には、このビルトイン・スタビライサー機能をどう評価するのかという問題に若干意を配る必要がある。

 近時の様々な「構造改革」はフラット化を進めるものであり、法人税や累進所得税の改変により税-財政の当該機能が弱くなっているとも言われる。失業保険も当該機能を有していたが、そのカバレッジの低下によって、機能を弱めている面がある。
勿論、ビルトイン・スタビライザー機能を強化すると、景気後退時に景気の下支えにはなるが、景気拡大期には雇用抑制効果を持つことから、拙速に安定雇用を強化すべきと評価することは禁物である。
 雇用を企業内に留めることの方が良いのか、失業給付等の社会保障の形で景気悪化時の下支えをして、社会全体で景気の影響の平準化を進めることとするのか、検討が必要である。

2009/01/13

オプション理論と労働法制

 オプション理論から見た場合、期間の定めのない「正規雇用」と期間の定めのある「有期雇用」との関係については、実体と異なる理論的帰結が導かれる場合がある。

2009/01/11

タイミングのずれた派遣法制見直し

 雇用に関するルールの見直しとは,そのルールの対象が,売買契約のような取引に関する債権債務関係が時間的に1回で終了する法律関係と異なり,一定の期間に渡って法律関係が継続する,いわゆる「継続的契約関係」であるため,見直されたルールが効力を有することとなる時期と,その見直されたルールの対象となる契約関係がいつからのものかということあ,そのルール変更の目的達成に関して,非常に重要な影響を及ぼすことになります。

雇用情勢悪化の波は、派遣労働者など非正規労働者だけに押し寄せるものではない。
 ~中略~
非正規労働者保護だと思い込まれた規制強化は、明らかに正規労働者保護策に化ける結果となる。

~「官邸斜め向かい~霞門の眼」 1月10日~

 
 製造業への派遣労働をより制限するような規制の見直しが検討されているようであるが,このタイミングで行う単純な派遣禁止措置は,

 ・現在及び近い将来(派遣禁止措置が有効になるまでの間)に契約が解除されることを防げない
 ・将来に渡って経営者の派遣労働者雇用意欲を大きく減退させる

という機能を果たし,目下の失業を減らす効果もなく,将来の雇用拡大の芽を拡大することもないという帰結になることが予想される。

 とすれば,まずは「徳政令」のような発想で望むことが必要なのではないか。

 ・一定の過去及び現在,有効な契約に基づいて雇用されている派遣労働者の者の解雇を違法行為とする
 ・この違法行為となる期間は厳格に期限付きとする(例えば,今年いっぱい 等)

 このような特別措置立法を行うのである。これであれば,現在の失業を防ぐ効果を持ち,かつ将来に長期に渡って雇用意欲を減退させてしまう効果を持たない措置を講じることができると思われる。
 なお,この立法における「違法行為」とは,行政取締法規上違法で,行政的な罰則があるという法律では全く意味がない。目下の労働基準監督署の機能では,違反をやったもの勝ちになるのは目に見えている。
 そうではなく,民法上の不法行為であることとして,かつ,損害賠償を違法状態が継続する期間内の賃金及び福利厚生費と法定してしまうのである(場合よっては,訴訟費用,弁護士費用を含めることも有効)。民事的に金銭支払いの義務化がなければ,この規律を無視する企業が多数叢生することは目に見えている。
 よって,時限的な民事ルールとして導入することが効果的と思われるがどうか。

 

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